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ナーシェルと不思議な仲間たち

  • 2019年9月26日
  • 2020年2月24日
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其の七 イカサマ師はどちら

 ナーシェルから話をきいた月の王は、うーんとうなったきり、腕をくんでなにもいわなくなった。
「王さま、素直に太陽の王さまにあやまってくださいよ」
 ネッチがたのみこむと、
「なにをいうか、もとはといえば、太陽の王がチェスの駒に細工をしたのが発端なのだぞっ。わしからおれたりするものかっ」
 と大喝したので、
「あれ、へんだな。太陽の王さまもおなじことを言っていたよ」
 ミッチがはてと小首をかしげた。
「なにっ?」と月の王はおどろいた。「そんなはずはない。イカサマをしたのはあっちの
方じゃっ」
 ネッチたちはなんともこまって視線をかわした。
 おたがいがおたがいをイカサマだと言っている。いったいどちらを信じたらいいのだろう。
「ひょとしてさ……」ミッチはネッチにささやいた。「両方イカサマしたんじゃないかな?」
 それをきいて、ネッチはうなずきながらこたえた。
「そうかもしれない」
 ふうせん男爵はむずがゆそうにはらをブルブルっとふるわせ、
「なんともみょうな話だなぁ」といった。
 月の王は太陽の王をイカサマ師だとののしり、むこうからあやまらないかぎり自分はゆるさないし、月をもとにもどしたりもしないと言いはった。
「太陽の王とおなじことをいっとるぞ……」
「説得はむりなんじゃない」
 トラゾーとシングルハットが互いの耳にささやいている。
「そんなこといわずに、太陽の王さまと仲なおりをしてよ」
 ナーシェルが月の王にすがりついた。
「いやじゃ、あんな奴とはぜったいに仲なおりなんかするものか!」
 月の王がその手をふりはらい、ナーシェルはしりもちをついた。
 ナーシェルの鼻の頭がみるみるうちに赤くなり、目にはなみだが一杯たまってしまった。意固地になった王さまは気づきもしない。
「おのれ、ナーシェル公になにをするかっ」
 トラゾーがおこって柄に手をかけたが、ふんふんいうばかりでちっともぬけない。
 王さまがさめきった視線を向けると、
「「もういい!」」
 ミッチとシングルハットが同時にさけんだ。トラゾーと月の王は同時にびっくりした。
「それってわしのこと?」
 自分をゆびさすトラゾーを無視し、ミッチは肩をそびやかした。
「こうなったらどっちがわるいか、はっきり白黒をつけようじゃないか!」
 とさけんだ。
「どうやって?」
 ナーシェルが眉をしかめると、
「わしらのほし──故郷には、面とむかって口論できる場所がある」
 ネッチがあっと声をあげた。
「そうかっ」
「チェス裁判だっ」
 シングルハットがおもしろがってわめいた

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