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ナーシェルと不思議な仲間たち

  • 2019年9月26日
  • 2020年2月24日
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「あいたた、ひどい目にあった」
 ミッチは腕のないネッチを、苦労してたすけおこしながら、しきりに腰痛をうったえている。
「じつに──じつにすさまじい破裂だった」
 と、ネッチがいたそうに奥歯をかんだ。
「男爵はどこに行ってしまったんだろう?」
 ナーシェルがきょろきょろとふうせん男爵の姿をさがしている。そのうち、乱気流にもまれていたシングルハットが、ふらふらふらりとおりてきた。
 あいかわらずぺらぺらのままだが、それでもへらず口だけは健在のようで、
「よくもおいらをこんな目にあわせたなっ。男爵め、前歯がもどったらおぼえてろっ」
 と、怒っている。
 後ろから、ネッチとミッチもやってきた。
「男爵のすがたが見えないね」
「あいつめ、きっと逃げたにちがいないぞ」
 四人はしばらくふうせん男爵をさがしたが、いっかな姿がみえない。
 なかばあきらめかけた時、
「おーい、おーい」と、上から声がした。
 みあげると、ふうせん男爵のしぼんだ体は、こわれたシャンデリアにからみついていて、そこから助けをもとめているのだった。

 シングルハットはしかたがないというふうにため息をついて、シャンデリアにからまった男爵の体をほどいてやった。
 下におりてきた男爵のからだは、みるも無残にちぢんでしまって、干柿のようになっていた。
 血色のよかったほっぺたは、ウソのように青白く、おじいさんのようにシワだらけになっている。なんせ、皮がたれ下って目がなくなったのだから、その変貌ぶりといったらなかった。
 だから、
「お願いだから、ポンプで空気をいれてくれよぉ」
 といったときには、ナーシェルはすっかりたすけて上げる気になっていた。
 ポンプは足でふむタイプの奴で、男爵はホースをへそに当てて、空気を体にためこんだ。
 ナーシェルがポンプをふむたびに、もりもりもりと、男爵の体がふくれていく。
「もとにもどったら、また悪さをするんじゃないか」
 とミッチたちは心配したが、男爵はしょげてしまって、その心配はまったくなかった。
 数分後、もとのサイズにもどったときにはすっかり感謝して、おとなしく封書をさしだした。

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