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ナーシェルと不思議な仲間たち

  • 2019年9月26日
  • 2020年2月24日
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其の二 ブリキの王さま、頭をなやます

 ブリキの城にも門番がいる。木の葉の国ではトランプ兵。こんどはブリキの兵隊だった。
 ところが、かれらはたいへん元気がなく、うごいても体をギーギーいわせるばかりで、まったく精彩というものがない。
「雨水のせいだ」
 ナーシェルはいまいましそうに雨雲をみやった。
 木の葉の国からの使いだというと、ブリキの王はすぐさま会ってくれた。
 ブリキの王さまは、やはりブリキでできていて、あたまにブリキの王冠をかぶり、せなかにはブリキのマントをはおっている。
 ブリキでできたかたそうな椅子に、どしりとすわって待っていた。
「おお、よくきたな。木の葉の国の女王は元気でおるか?」
 と言われたので、ナーシェルたちはひどくびっくりしてしまった。
「んっ? どうしたのじゃ?」
 王さまはナーシェルたちのようすに気づいて声をかけた。
 ナーシェルはだまって封書をもっていった。
 王さまはしばらくうんうん言いながら封書をよんでいたが、やがて顔を上げると、
「そうか、木の葉の国はやはり……」
 と、苦しそうにつぶやいた。
 それから視線をナーシェルにむけて、
「お主がナーシェルなのだな。木の葉の女王のくるしみはよくわかるぞよ。なにせ木の葉の国を苦しめている原因は、この国にあるのだからな」
 王さまはつらそうに言葉をはきだされた。ナーシェルはまよっていたが、おもいきったように口をきいた。
「王さま、王さまはなぜストーブをとめてしまったの?」
「…………」
 ブリキの王はだまっている。なにか言いにくそうだった。
 ナーシェルは質問をかえることにした。この国についてから、ずっと気になっていた疑問だった。
「ブリキの国はどうなってしまったの? こんなに雨がふっては、国中がやがてはサビだらけになってしまうよ」
「うむ……」
 と王さまは静かにうなずいて、ブリキのヒゲをゴシゴシしごいた。
 王さまは窓に目をやった。雨が滝のようにながれている。ざーざーという音が耳ざわりだった。
 やがて、王さまは話をはじめた。
「雨水の王がとつぜんわが国に雨をフラしはじめたのだ。おぬしのいうとおり、このままでは国のものはみなサビてしまうだろう。わしの体もほれ」
 と、ブリキの王は玉座をたった。
 関節をうごかすたびに、ギーギーと音がする。王さまの体も、すでにサビがはじまっているのだ。
「もうサビがはじまっておる」
 かなしそうに言った。
 王さまはつかれたように椅子に腰をおろしたが、そのときもブリキのあわさる音がした。
まわりの側近が、さめざめと泣きはじめた。
「なぜ雨水国は雨をふらすの?」
「わからん。とつぜんのことだった。たしかめようにも、ブリキの国の住人では、いっぽも外にでれんのだ」
 ここでブリキの王はつよい視線をナーシェルにむけた。
「まさか……」
 ポケットのなかで、ふうせん男爵はうめいた。いやな予感が、頭のなかではしりまわっている。
 はたして、その予感は的中した。
「虫のいい願いだとはわかっている。だが、このことをたのめるのは、お主たちをおいてほかにないのだっ。たのむ、ブリキの国のために、雨水国に行ってくれっ」
「でも、ぼくは……」
 ナーシェルは言葉につまった。ふりかえり、仲間の顔をみる。
 ネッチたちもこまってしまった。とても石炭のことをきけるふんいきではない。それに、ナーシェルはまたやっかいごとを押しつけられそうなのだ。
「王さま。せめて木の葉の国のために、花と草木のストーブに、火をともしてもらえませんか?」
 王さまはかなしそうにナーシェルを見つめていたが、すこしたって口をひらいた。
「ついてきなさい」
 そういって、さきに立つと歩きはじめた。
 ナーシェルたちは顔をみあわせ、王さまの後についていった。

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