其の五 ふうせん男爵、気球になる
「そうかやっぱりダメだったか……」
話をきいたシドじいは、そういって何度もうなずいた。
ナーシェルたちは太陽の王の説得をあきらめ、天文台にもどってきたのだが、
「月の王はどこにいるんです?」ネッチがきくと、「あそこじゃよ」シドじいは天井をゆびさした。
「屋根裏にいるの?」
ナーシェルたちが妙な顔をしていると、シドじいはあきれたように頭をふった。
「ちがう。空のうえ、つまりはお月さまじゃよ」
「は──?」
ナーシェルたちはかたまってしまった。まさかこの地上からいなくなっているとは思わなかったのだ。
「月にいるだとっ? そんなのどうやって行けばいいんだよっ」
シングルハットがおこってシッポをふりたてると、
「だから、月の王に会うのはむずかしいといったじゃろうっ」
シドじいもムッとしてやりかえす。「ほかに月に行く方法はないんですか?」
「あることにはあるが、月の王さまにしかできんわい」
と答えた。ナーシェルは愕然と問いかけた。
「じゃあ、月に行くのは?」
「ムリ、ということじゃ」
◇ 閑話休題
大事なお知らせですけど、またお話が切れております。この後、ナーシェルたちは気球づくりにおおわらわとなるのですが。
お話は、気球で飛び立った直後、順調な空の旅から始まります。