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ナーシェルと不思議な仲間たち

  • 2019年9月26日
  • 2020年2月24日
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太陽と月の国

其の一 暗闇の国

 ナーシェルたちは、上げた悲鳴も消えぬうちに、太陽と月の国についていた。
 体重がもどったと思ったら、こんどは目がみえない。すぐに、それはここに太陽がないからだということに気がついた。
 ナーシェルはごくりとのどをしめらせ、ぐっと目をみひらいた。太陽と月の国は、おもくるしい闇にしずんだままだ。
 光の象徴だった太陽と月の国は、すっかり姿をかえてしまっていた。もとは夜でも月と満天の星がてらす、うつくしい国だったのだが、今は一寸先さえもみえない。
 周囲で衣ずれの音がする。ひとの気配はちゃんとある。
「ここは?」
 まっ暗な地面を手さぐりでたしかめながら、ナーシェルはまわりにいるはずの仲間に問いかけた。
「太陽と月の国じゃないかな。雨がふっていないし、地面もブリキじゃない。ほら、雨水の王のいったとおり、太陽も月もでていないよ」
「へんだな、自分の国の太陽もかくしてしまったのか?」
 ミッチが首をひねっている気配がする。
 すると、かれらの背後から、タッタタッタと、なにかが地面をかける音がした。
 ナーシェルがふりむくと、鞍にくくりつけたランプの明かりにてらされて、ドードー鳥がはしってきた。
「ドードー!」ナーシェルは歓声を上げて、ドードー鳥の首ねっこにしがみついた。「元気だったかい、ドードー? ずっと心配してたんだ」
 ドードー鳥が、ナーシェルのほっぺに、うれしそうにくちばしをすりよせる。
 元気になったナーシェルに、ネッチたちはうれしそうに目をほそめ、
「きっと、雨水の王さまが気をきかせてくれたんだよ」
「ちゃんと贈り物をうけとったし、いいところあるなぁ」
 とネッチとふうせん男爵が笑い合っている。「あっ、刀が!」
 トラゾーは自分の腰を見てわめいていた。トラゾーの腰にはちゃんと愛刀が戻っていた。
「よかったなぁ、トラゾーじいさん」
 腰帯からぬいて、鞘にほおずりしているトラゾーの肩を、ミッチたちがたたいた。
「もってても役に立たないのにな」
 シングルハットの悪態も、今はとんとこたえない。
「おい、あれをみろ!」
 ミッチとシングルハットが、暗闇をゆびさした。
 ランプの明かりがかすかにとどくあたりに、いく本もの足がならんでいる。
「こっちもだっ」
 ナーシェルたちはいつのまにかぐるりをとりかこまれていた。ひとの気配が急速にたかまりつつある。ざわざわと何者かがあつまる音がする。
「だれ?」
 ナーシェルの誰何の声に、かれらは明かりのなかに入ってきた。
 それは、かすかな明かりをもとめて集まった、太陽と月の国の住民たちだった。

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