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其の十 太陽と月の国
月の王と太陽の王は、手をとりあって城のまえに立っていた。
太陽と月の城は、篝火にてらされて、闇夜にうきたっている。門はおろされ、橋はかかったままだ。主人の帰りを、まっていたのである。
太陽と月の国の住民たちが、あつまって城をみあげている。先頭にいるのは、ナーシェルとネッチたちだった。
「世話になったな。いろいろとすまなかった」
月の王が、ふりかえってナーシェルたちをみた。
「太陽と月は、これでもとに戻るじゃろう。おぬしら、これからどうする」
と太陽の王がきいた。
「北よりの道をとおって、雪と氷の国にちょくせつ行きます」
と、ナーシェルがこたえた。
「そうか、雪と氷の国は極寒の地だ。女王の目的もわからん。気をつけていけ」
「はいっ」
ナーシェルたちが返事をすると、二人の王さまは、太陽と月の城へときえていった。
「わぁっ」
みんなは感嘆の声を上げた。
太陽と月の国は、あれよあれよというまに光にみちていった。空は青くすみわたり、地上は色をつけてゆく。
月の王がスキだった地上の景色が、また復活した。
昼がもどり、太陽の王と月の王は、またもとのように仲よくなった。雨水の王はよろこび、ブリキの国にふらさせていた雨をとめた。
城の窓から姿をみせたふたりの王に、群衆が歓声をおくっている。
シッカたちが気づいたときには、ナーシェルたちの姿はなかった。