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ナーシェルと不思議な仲間たち

  • 2019年9月26日
  • 2020年2月24日
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さようなら、不思議国

 ネッチたちはブリキの王からもらった石炭を、船が浮かばないほどつみこんだ。
 はじめて出会ったあの森で、ナーシェルとネッチたちはわかれることになった。
 木の葉の国は枯葉の危機からすくわれ、もとのおおらかでへいわな国にもどった。
 ながらく主人のかえりをまっていた虹の冒険号が、ぼぶんぼぶんとエントツから煙をはいている。
 森はいつものように静かで、鳥の声がヒューヒューきこえた。
「ネッチたちは、ずっと遠いところからきたんだね」
 冒険号をみあげながら、ナーシェルがいった。
 見送りは、ナーシェルとドードー鳥しかいない。
 トラゾーはナーシェルについて木の葉の国までやってきたが、いまはふうせん男爵とともに近衛隊長として木の葉の女王にやとわれている。
 ふたりとも見送りにきたがったのだが、あまり虹の冒険号を見られてはいけないので、ネッチたちは丁重にことわっておいた。
「ナーシェル、元気でな」
 元気者のシングルハットが、めずらしくまぶたをごしごしやっている。
「ほんとうに行っちゃうんだね」
 ナーシェルがさびしそうにうつむいた。
「なぁに、また来るさ」ミッチがなぐさめた。
「お前さんも元気でな、ドードー」
 ドードー鳥が、クエーとないた。
「今回の冒険は、とてもたのしかったよ。もちろんしょうしょうおっかないこともあったが」
 ネッチがおどけると、ナーシェルはすこし声を上げてわらった。
「なんでも途中でなげだしちゃだめなんだね。ぼく、一生懸命やってよかった」
 ナーシェルが満面に笑顔をうかべて語りだした。
「女王さまに頼まれてよかった。ネッチたちやいろんなひとたちに会えたんだもん。ぼくは永遠の子供だけど、いつかおとなになれるよね」
 ナーシェルがしあせそうな笑顔になった。
 ネッチがからかった。
「これは夢かもしれないよ」
「夢でもいいよ。ずっと忘れない」

 虹の冒険号は、ガタゴトといささか頼りなげにうかび上がって、しだいに高度をとりはじめた。
 冒険号の窓から、ネッチたちが手をふって、なにやらさかんに口をうごかしている。
 ナーシェルは走った。虹の冒険号が雲間に消え、やがて見えなくなっても、ナーシェルは走りつづけた。
 親友のドードー鳥が、ドタバタとその後をおいかけていく。
「わすれないからねー!」
 虹の冒険号の船底めがけてナーシェルは叫んだ。
 冒険号は梢にすいこまれ、やがて見えなくなった。

 木の葉の城では、女王やトラゾー、ふうせん男爵などが、窓から空をみあげている。
 虹の冒険号は、ボブンボブンとケムリをはきながら、雲間にすいこまれていった。そこにあらたに虹が生まれた。
 生きた木パンプットは、故郷の森で、ゆっくり目をとじ、たくさんの詩を吟味している。枯れはてていた枝には若葉がやどり、そのなかにはナーシェルたちの冒険譚も、千枚目としてくわえられた。
 国々は仲なおりをし、もとのように平和になった。
 ブリキの国は、もうサビの心配はなくなったし、花と草木のストーブは今日もげんきにケムリをはいている。
 雨水国には光がもどり、太陽と月の王は、今でもときどきはチェスをたのしんでいるようだ。
 木の葉の国の草木は、青々としげり、もとのうつくしい国にもどった。風になる草原を、ナーシェルをのせたドードー鳥がかけていく。
 雪と氷の女王は、それからはおおくの友人にかこまれ、心たのしく、暮らし、ましたと……さ。

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