トランプ兵は横二列にずらずらならんだ。
切るかわりに、でたらめにうごいて、どのカードがどこにいるかわからなくさせるのだ。
交換なしの一発勝負。しかも、いちど勝負につかったトランプは二度とつかえない。負けたトランプは相手にとられ、最後に多いほうが勝ちだ。
そうこうするうち、見物人はますます増えて、ざわざわあたりが騒がしくなった。
「これだけみている人が多かったら、インチキなんてできないよね」
ナーシェルが不安そうにネッチたちをみあげた。
ようやく用意がおわって、ダンカンとナーシェルたちは、道の中央でうしろにトランプ兵をならべてにらみ合った。
「そいつとそいつとそいつ、それにそいつとそいつ、前に出ろっ」
まずは、ダンカンがこちらのトランプをゆびさした。それまでじっと並んでいた五人のトランプ兵が、のっしのっしと前に出る。
といっても、ナーシェルたちのうしろに立っているので、どのカードかはわからない。
ダンカンはいったいどのカードを選んだんだろう?
見物人のささやき声が、いやに気になってくる。わらっているところをみると、あまり強くはなさそうだ。
「さぁ、そっちの番だぞっ」
と、ダンカンが大声をはり上げた。
ナーシェルはどきどきしながら手を挙げて、
「そいつとそいつとそいつとそいつ、それにそいつ。前にでろっ」
と、おなじように指でさした。
ダンカンのトランプ兵が、のそのそと進みでてくる。ナーシェルたちは緊張のあまり心臓がドキドキした。
ダンカンが、
「もう一歩だ」
と言うと、二組のトランプ兵は、それぞれナーシェルとダンカンの前に出ていった。
トランプ兵は後向きに歩いているので、自分たちのカードが見えた。
ハートの6と7。それにクローバの6に、クラブの4、ダイヤの7であった。
ミッチがネッチの耳にささやいた。
「ツーペアだっ」
ネッチが無言でうなずく。
ナーシェルが不安そうな表情でふりむいた。
「強いの?」
どうやらナーシェルはあまりポーカーを知らないようだ。
ネッチたちはなんとも答えることができなかった。実は、ツーペアはそんなに強くない。
「さてと、決着をつけようかねぇ」
ダンカンがもみ手をしながら言った。
「表を向けぇい」
ダンカンが両手をふりあげると、トランプたちはくるりと右回りした。
ナーシェルのトランプがこちらに絵柄をむけ、ダンカンのトランプ兵が数字をみせる。
「あっ」
と、ネッチとミッチは、声を上げてさけんでしまった。ダンカン側は、なんとフォーカードである。
「ツーペアにフォーカード。俺の勝ちだな」
ダンカンがにやりと笑った。
負けたトランプ兵が、勝ったがわに連行されていく。
「負けちゃったの?」
ナーシェルがふっくらした眉を、いっぱいしかめてふりむいた。
「次だ、次!」
ネッチとミッチはやけくそになって叫んでいた。