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ナーシェルと不思議な仲間たち

  • 2019年9月26日
  • 2020年2月24日
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其の二 住人たちもこまってる

 集まった太陽と月の住民たちは、種々さまざまな姿をしていた。
 あたまが三日月のかたちをしている者。アルマジロが二足歩行している者。体長三十mのヒゲクジラ……。
 みんなは、
「やぁ、光だ光だ」
 といって、うれしそうにランプのまわりにあつまってきた。
「きみたちはこの国の住人じゃないようだね」
 がっちりした体格の、普通の男がはなしかけてきた。
「木の葉の国からきたんです」
 とネッチがこたえた。
「木の葉の国っ。それは大変な長旅だなぁ」
 男が感嘆の声を上げると、太陽と月の国の住民たちは、そろってうなずいた。
 どうやらわるい人たちではなさそうだとナーシェルはおもった。
「この国はなんでこんなに暗いんだ?」
 ミッチがたずねると、
「そりゃあんた、太陽が出てないからさ」と男は空をゆびさした。
「もうずっとこの調子なんだ。こんなことは今までなかったから、みんなおどろいてるよ」
 どうやら困っているのはここも同じらしい。
「しかし、またなんで太陽がなくなったりするんです?」
「そりゃ太陽の王さまがかくしてしまったからだよ」
「ええっ」
 男の返事に、ナーシェルたちは仰天してさけんだ。
「じゃあ、やっぱり雨水の王のいったことは本当なのかな?」
「そ、そんなのまだわかんないよ」
 鼻をつきあわせて話し合っていると、さっきの男がナーシェルの肩をつついた。
「いったい、なんの話だね?」
「じつは……」
 ナーシェルはこれまでのいきさつを、わかりやすく話して聞かせた。
「そうだったのか……」
 男がおもくため息をつくと、それを皮切りに住民たちがザワザワとしゃべりだした。
「うちの王さまたちのしでかしたことで、そんなたいへんなことになるとはなぁ」
 という男のつぶやきを、ネッチとミッチはききのがさなかった。
「「たち?」」
 と二人は同時にきいた。男はうなずいて答えた。
「太陽と月の国は、太陽の王と月の王の、ふたりがおさめているんだ」
 ナーシェルたちはまたまたびっくりした。男の話では、国からひかりが消えさったのは、この二人のケンカが原因なのだという。
「その二人の王さまには会えないんですか?」
「さぁなぁ。太陽と月の城は閉鎖されてしまったし、王さまたちもどこにいるのか、おれたちにもわからないんだ」
 ナーシェルはがっかりした。
 すると、黒いスーツをきたうさぎが、
「いや、でも待てよ。シドじいならなにか知ってるんじゃないかな?」といった。
「おお、そうか。シドじいのことをわすれていた」とかれは手をうちあわせた。
「シドじい?」
「天文学者のじいさんのことさ。あのひとなら事情通だから、行けばいろいろ話してくれるよ」
 男はいきおいこんで身をのりだした。
「そのシドじいさんはどこにいるんだ?」
「たしか、北の天文台で、ガス塔をつくっているはずだ」
「ガス塔?」
 ナーシェルたちは、なるほどなぁと思った。今、太陽と月の国にたりないのは、明かりだったからだ。
「よし、おれが案内してやろう」
 と男が腰を上げた。
 あたりは風もなく、重苦しい闇だけが沈澱している。
 その中を、ランプの光が、ユラユラと周囲の闇をはらいながら、移動をはじめた。

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