羅生門、鼻、蜘蛛の糸、桃太郎、猿蟹合戦、トロッコ、藪の中、鼠小僧次郎吉、三右衛門の罪、或敵討の話、或日の大石内蔵助
■羅生門
1915年(大正4年)11月に雑誌『帝国文学』発表
平安時代、天変地異がうち続き、衰退した都で、一人の下人が途方にくれる。主人から解雇された彼は、このままでは盗賊になりはてるしか道はないと思い悩む。
書かれたのは、東京帝国大学在学中のことで、さすがの芥川も無名の時代。雑誌掲載をえて、1917年、短編集「羅生門」として出版。
黒澤明の同名映画でも有名だが、本作から取り入れたのは舞台背景と、服を剥ぎ取るエピソードのみである。
また、結びの一文は、たびたび変更されている。
○用語集
丹塗……ニヌリ・丹、または朱で塗ること
朱雀大路……平城京、長岡京、平安京、中央を南北に通じる大路
鴟尾……シビ・かわらぶき屋根の大棟の両端につけられるかざり
衰微……スイビ・衰弱
甍……イラカ・家の上棟。家屋の背、屋根の頂上の部分。
低回……テイカイ・思いにふけりながら、ゆっくり歩き回ること
逢着……ホウチャク・いきあたること
嚔……クサメ・くしゃみ
檜皮色……ヒワダイロ・黒みがかった蘇芳色(黒みを帯びた赤)
暫時……ザンジ・少しの間
語弊……ゴヘイ・言葉の使い方で、誤解を招くこと
聖柄……ヒジリヅカ・三鈷柄の刀剣
検非違使……ケビイシ・平安初期に設置された治安維持と民政のための機関
四寸……シスン・十二センチ
疫病……エヤミ
黒洞々……コクトウトウ・洞穴の中のように、あたり一面まっくらで見分けのつかない様
■鼻
■用語集
沙弥……シャミ・出家はしたが,まだ具足戒を受けず,出家修行者である比丘になる以前の少年
渇仰……カツゴウ・仏教で、仏を心から仰ぎ慕うこと。
鋺……カナマリ・金属製のわん。
僧供……ソウグ・僧にたいする供養
僧俗……ソウゾク・僧侶と俗人。
水干……スイカン・男子の平安装束の一つ。
震旦……シンタン・ 中国の異称。支那の称と同系統。
聴従……チョウジュウ・ききいれてその言う事に従うこと。
折敷……オシキ・狭い薄板を折り四囲のふちにした角盆。足つきのもある。神事・食事用。
残喘……ザンゼン・残り少ない余命。 長くない命。 残生。
誦経……ズキョウ・経文を声を出して(そらんじ)読むこと。
中童子……寺院で召し使う十二、三歳ぐらいの少年。
法慳貪……あさましいこと
風鐸……フウタク・寺の堂や塔の、軒の四隅につり下げて飾りとする、鐘形の鈴。
九輪……クリン・塔の露盤の上の、輪が九つはまった装飾柱。
■蜘蛛の糸
過去にたった一度の善行のため、お釈迦様は血の池地獄に苦しむ大泥棒、カンダタに救いの手を差し伸べますが……
ちなみにドラクエに出てくる大泥棒は、この作品が名前の由来……
■桃太郎
今回は芥川版桃太郞をお届けします。桃太郞ってこんな話でしたっけ? と疑問符がうかぶことうけあい。ですが、そこは短編の名手芥川、誰もしらない新機軸で、あらたな桃太郞をつむぎだします。
読んでいて、鬼の酋長が桃太郞に鬼ヶ島討伐の訳を問いただすさまは、そのむかし、むかし、おおむかし、たとえばインカ帝国などで、植民地支配のため、いわれの泣き責め苦を受ける、原住民の悲哀を思い浮かべてしまいました。
芥川版桃太郞。なかなか深くて、面白い!
■猿蟹合戦
銭形平次捕物控で、猿蟹合戦を配信しております。
今回の芥川龍之介は、同名の短編小説「猿蟹合戦」
さすがは文豪。短いですが、お聴きください。
■トロッコ
大正11(1922)年3月 1日発行の雑誌「大 祝」
教科書にも取り上げられる芥川の名作
お聴きください。
■藪の中
初出は、1922年「新潮」1月号
4人の目撃者と3人の当事者が語る事件の真相は、果たして?
黒澤明監督による映画『羅生門』に取り入れられた名作です。
■鼠小僧次郎吉
寛政9年〈1797年〉 – 天保3年8月19日〈1832年9月13日〉に存在した江戸一番の大泥棒。実在しただけでなく、詳しい調書も残っております。
大名屋敷のみを狙って盗みに入り、人を疵つけることもなかったことから、義賊といわれる。鼠小僧の最後では、縁者が連座で処罰されるはずべきところ、親とは勘当絶縁、妻や妾とは捕まる前に絶縁していたため、処罰はされませんでした。
貧民に金をまいたというのは、史実上は形跡がなく、残念ながら虚構だそうです。
■三右衛門の罪
加賀の宰相、治修の家来、細井三右衛門は、同藩の数馬という若侍に闇討ちをされ、これを斬り伏せてしまう。闇討ちとは穏やかでない……
三右衛門には高い評価を下してはいるが、事件の経緯に不審を思った治修は、三右衛門を呼び出し問詰する。
公平を求めるあまり、かえって逆の依怙をしてしまう、三右衛門の心情を見事に描いた短編の名手、芥川の名作を全文朗読。
■用語集
爾来……ジライ・その後。それ以来。
辰の刻……午前8時
震怒……シンド・激しく怒ること。また、そのような怒り。特に、天子の怒りにいう。
私曲……シキョク・公正でないこと。不正。
一毫……イチゴウ・ほんの少し。 寸毛。
■或敵討ちの話
誰も望まない敵討ちのお話で、芥川先生さすがのひねりをくわえた名作短編です
■或日の大石内蔵助
中央公論、1917(大正6)年掲載作品。
芥川龍之介が、義士たちのリーダー内蔵助の孤独を描きます。
#芥川龍之介 #朗読 #文豪 #AudioBook