それは、たしかにトランプ兵だった。ナーシェルのとは、裏の柄がちがっている。
ダンカンと名乗ったその男は、ナーシェルたちを表につきだし、自分のトランプ兵を通りにならべた。
数はきちんとそろっているようで、ダンカンはそれを、手のひらサイズの箱からだした。
(どうしてトランプ兵があんなちいさな箱にはいるのかは、疑問であったが)
よりそう三人の目の前で、ダンカンは傲岸に宣言した。
「ポーカー勝負だっ」
ナーシェルたちは顔を見合わせた。
「ポーカー勝負?」
すると、ダンカンはあきれたように舌打ちをした。
「なんにも知らねぇんだな」
「ナーシェルは主人になったばかりだからしょうがないんだ!」
目をさましたシングルハットが、さっそくきいきい声をはり上げる。
ダンカンは、「わかった、わかった」と、どうでもいいふうに手をふった。それからポーカー勝負の説明をはじめた。
「いいか、お互いのトランプを、敵に背をむけてならべさせる。柄をみせるんだ。数字が書いてあるほうじゃねぇぞ……おれはお前のトランプを五つえらぶから、お前もこっちのをえらべ。えらんだらいっせいに表をむけて勝負だ」
「それはわかったけど……」
しぶるナーシェルに、男はいった。
「安心しな、ズルはなしだ。勝ったほうが相手のトランプ兵をもらえる。どうだ?」
「そんなっ」
ナーシェルは、女王さまからもらった大事なトランプ兵をとられるときいて、青くなったが、
「いやだってんなら、そのクソネズミは猫にくわせる」
ダンカンにシングルハットを指さされて口ごもった。
「いいだろう。受けてたとう」
ネッチが胸をはって進みでた。
「お、おい、ネッチっ」
ミッチがその袖をひっぱった。こういうとき、貴族のネッチはタチがわるい。たぶん、先祖の血がギャンブルにかりたてるのだと、ミッチは思っていた。
「いいじゃないか、やってみよう。きみはどうだ、ナーシェル」
ネッチが意見をもとめると、ナーシェルはうかない顔で、「しかたないよ。負けるとはかぎらないし……それに、シングルハットを渡すわけにはいかないもん。勝負してみよう」
といった。シングルハットにはさきほど助けてもらった恩もある。
ダンカンは、ネッチたちがいうことを聞いたので、満足そうに笑みをうかべた。
「さぁ、うらを向けっ。トランプ勝負のはじまりだ!!」