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ナーシェルと不思議な仲間たち

  • 2019年9月26日
  • 2020年2月24日
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其の四 トランプ兵のポーカー勝負

 ナーシェルたちは、トランプ兵を連れて、キタの町についた。
 どの家も、城とおなじように木をくりぬいて作られている。この町はどうやらまだ平気のようで、いろいろな草花があちこちで咲きみだれていた。
 道行く人ものんびりしていて、ここもそのうち枯れてしまうなんて、とても信じられない話しだった。
「なあ、ナーシェル。どこかちかくの酒場で休まないか?」
 ネッチとミッチが、ナーシェルの後ろでだらしなくへたばっている。その腹がぐうとなった。
「そうだなぁ」
 ナーシェルはしばらくきょろきょろしていたが、
「むこうに食堂があるから、そこまで行こう」
 と、遠くにある建物をゆびさした。
 二人がおどり上ってよろこんでいると、シングルハットは、
「なさけない奴らだ」
 と、また悪態をついた。

 その酒場にはいったことを、ネッチたちはすぐに後悔することになった。
 席についているのが、どれもとてもこわそうな面相の男たちばかりなのだ。しかも、酒がはいっているからなおのことである……。
 店は昼間だというのにうす暗く、陰気なかんじがする。ネッチたちは、あきらかに場ちがいで、周囲の視線をあびてしまった。
 鳥人間もいれば、パンプットのような生きている木もいる。ただし、目つきの悪さと体格のよさときたら一級品だった。
「やっぱり出ようか?」
 と、ナーシェルがささやいたので、二人はあわててうなずいた。実は、さっきからおっかなくてしょうがなかったのである。
 ナーシェルたちが店を出ようとすると、その前に三人の男が立ちふさがった。
 ナーシェルたちに、
「おいおい、どこ行くんだよ」
「ゆっくりしていけよ」
 とからんでくる。
 ネッチとミッチはおそろしさにふるえ上がってしまった。二人は冒険は好きだが、こういうことは大の苦手である。
「子供がいるぜ」
 男たちはナーシェルに気づいて、ものめずらしそうにながめはじめた。
「し、失礼じゃないかきみたち!」
 ミッチとネッチは口々にわめいたが、声が完璧にうら返ってしまっている。
 ナーシェルは封書が心配になって、さっとふところをかかえこんだ。
「おっ、なんかかくしてやがるぜ」
 男の一人が、おもしろがってナーシェルのほそっこい腕をつかんだ。
「わぁ」
 と、ナーシェルが悲鳴を上げた。
 シングルハットはその声をきき、ポケットから走りでると、ナーシェルの服をかけのぼっり、男の指にじまんの前歯でかみついた。
「いてぇ!」
 男は盛大にどら声をはり上げて、シングルハットごと腕をふりまわしはじめたっ。
「うわあああっ」
「シングルハットォ」
 ナーシェルは泣きそうになりながら、男にむしゃぶりついていった。
 そのとたんに、シングルハットは男の手をはなれ、ミッチの胸にとびこんだ。
「シングルハット……」
 ミッチが頬をぴたぴたと叩くが、かわいそうに、シングルハットはすっかり目をまわしている。
「こいつ、そのネズミをよこせっ」
 男たちは猛然とおこって、ネッチとミッチにつかみかかってきた。二人はすっかり仰天してしまった。
「やめろ、こいつっ」
「わしにさわるなっ。もう何ヵ月とフロに入ってないんだぞ!」
 ミッチがさけぶと、男たちはさすがにいやそうな顔をしたが、またたくまにとり押さえられ、衿をもたれて吊り上げられた。
 ナーシェルを見ると、あちらも組みついた男にかかえられている。
 男たちはシングルハットをうばいとろうとしたが、ミッチは腕に抱えてはなさなかった。
そのうち男たちのほうが音を上げてしまった。
「こいつ、ナーシェルをはなせ!」
 ネッチはツバをとばしてさけんだ。手足をじたばたさせるが、さっぱり埒があかない。
「ネッチは伯爵なんだぞ。後がこわいぞ」
 と、ミッチがまったく通用しないようなことを言っている。
「伯爵ねぇ」ネッチの前で、ヒゲ面の男が下卑たわらいをはりつかせ、表にちらり目をやった。「するってぇと、表のトランプ兵はおまえのだな」
 そういえば、トランプ兵とドードー鳥は、店の外に待たせたままだ。
「わたしのじゃない。ナーシェルのだ。その子をひどい目にあわせると後がこわいぞっ」
「そのわりに助けに来ないじゃないか?」
「命令をしないかぎりうごかないんだ。そのかわり、命令したときはすごいぞ」
 トランプ兵のうすっぺらな体をおもうと、とてもこわいなどとは思えなかったが、とにかくネッチはおどかした。
 男は、また皮肉った笑みをうかべて、こういった。
「知ってるさ。おれも持ってるからな」
「へっ?」
 宙につり上げられたまま、ミッチとネッチは顔をみあわせた。

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