其の七 きちがい料理をお食べなさい
「飯だぁ! ろくでなしどもー! 飯だぁー!」
つかれきった表情でかたづけをしていたところに、家政婦長のガラ声がひびいてきた。
ナーシェルたちはやれやれと顔をみあわせ、声の聞こえる方に歩いていった。
あんな目にあっても、腹はへるものらしい。
ナーシェルたちがつれてこられたのは、くらくてジメジメした台所だった。
かまどではなにやらあやしげなスープがぐつぐつと煮たっている。
家政婦長はあいかわらず怒気もあらわに、ナーシェルたちを部屋におしこみ、むりやり席にすわらせた。
「そら、飯だよ」
とスープを皿にぶっかけ、ナーシェルたちの前にどんとおいていく。
それはかわったスープだった。硫黄のにおいがする。表面には目玉をギョロつかせた魚のあたまがプカプカういている。
「これはなんだ……」
ミッチがトラゾーの脇腹を指でつついた。
「知らん……みたこともない」
トラゾーはゴクリとつばをのみこんだ。
ネッチは皿に顔をちかづけにおいをかぎ、
「食えるんですか?」ときいた。すでに敬語である。
家政婦長は冷厳とこたえた。
「死にたかったら、食ってみな」
すでに食っていたふうせん男爵は、口のなかのスープをふきだした。
「ゲーホゲホゲホッ」
「「そんな物食わせるなぁ!」」
ミッチとトラゾーがテーブルをひっくりかえした。
「いやならいいさ、今晩はメシぬきだ」
家政婦長はでばった腹をことさらつきだし、やせほそったミッチとトラゾーはそれだけで圧倒されてしまった。
「しかし、家政婦長。わたしたちは今まできちんと労働を……」
「労働? そんなくだらないことをやってたのかい?」
「あんたがやれと言ったんじゃないか!」
「知らないね」
平然とこたえる家政婦長に、一同は言葉をなくしてしまった。
壁ごしに、悲鳴や嬌声がたえまなく聞こえてくる。
ナーシェルたちは、つばをのみこみ、スープをみつめた。
晩飯は、どうやらあきらめた方がよさそうだ。