その六 大盗懺悔
お江戸で評判の盗人風太郎。三日以内に盗んだものをかえすのだが、お上は威信を賭けて、捕縛を命ずる。
平次は笹野新三郎の命を受けて、捜査にのりだすが、そんな平次をあざ笑うように、風太郎は華麗に物を盗んではかえすをくりかえす。
登場人物
風太郎……江戸を騒がす大泥棒。盗んだものをかえすことで、一躍有名となる。
上総屋重兵衛……質屋の主。風太郎の被害にあう。
繁野友白……茶人・茶碗を盗まれる。
赤井左門……旗本二千八百石。千両箱二つとられる。
足尾喜内……用人
珊五郎……遊び人
用語集
八重……ヤエ・数多く重なっていること。
豊太閤……豊臣秀吉の敬称
土壇場……処刑のために築いた土の壇。前に穴が掘られた。決断を迫られる最後の場面。進退窮まった状態
鐚銭……ビタセン・室町中期から江戸初期まで私鋳された、粗悪な銭。私鋳銭。
青銭……アオセン・寛永通宝四文銭の通称。材質が真鍮で、一文銭にくらべて青白くみえた。平次は一文銭より重量のある青銭をなげていたと思われる。
名題……名題看板、名題役者の略
宗匠……ソウショウ・文芸技芸に熟達して、人に教える人のこと
過怠……過失。てぬかり。
番手桶……掃除などに使う粗製の手桶。
新身……アラミ・あたらしく鍛えた刀。
後生気……ごしょうぎ。来世の安楽をねがい、功徳をしたいと願う心。