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浮幽士 司馬

   18

 次に目を覚ましたとき腹部の痛みは本当に消えていた。完全にふさがったわけではいないが、ずいぶんとましになっていた。鳳仙が彼のことをのぞきこんでいる。なんだか心配そうな顔をしていたから、彼は妙にうれしくなった。鳳仙が生きていたことがうれしいし、心配されるのは面映ゆかった。
 そう言えば、この娘はずいぶんと瞳が美しい……。
 意識がようやくしゃっきりとした。李玄は慌てて起き上がり、
「玄武はどうなった? 父上はどこだ!」
「無理をするな」
 と鳳仙は彼をいさめる。手には霊玉が握られている。玄武の使っていたものをどうにか探してきたようだった。
「そいつで治してくれたのか」
 李玄は鳳仙の機転に感謝しながら、デュナンに目を向けた。デュナンが彼を起こしたのだから、彼はあいつのを見たはずである。しかし、デュナンは観念するように首を左右に振った。考えたら、自分だって玄武は見たことがない。
「そうか……」
 と彼も肩を落とす。なんだ、と鳳仙が問うた。
「意識をなくす前、俺は誰かを見た気がした。霊魂だったみたいだ。父上があそこにいるのなら、抜け出したのは、きっと玄武だ」
「では、結界内に残っているのは」
 そこまで言って、鳳仙は唇をきつく結んだ。聡明な娘だから、議論よりも確認の方が先と考えたようだった。

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