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二人は長い間そこにいたようだった。けれど、時間はそう経っていなかった。瓦礫の向こうでは別界の人々がうごめく声がしたが、まだ近くにはいないようだった。
ほうけん、と最後に口にしたのが、なんなのかはわからなかった。二人は本界に戻る術をなくし、秘密を握る何者かも逃してしまった。
李玄は汪豹を抱えると、ことさら背を伸ばしてあるきはじめた。妙に大人びた表情だった。鳳仙は鉄斎を背負っている。そして、李玄と鳳仙は二人の亡骸を連れて、その場所から姿を消した。それは二人の長くも辛い旅の、最初のはじまりにすぎなかった。
□ 第 一 部 完