山本周五郎の感動中編 【花筵】 朗読時代小説  読み手七味春五郎  発行元丸竹書房

 

 書き下ろし――といっても、周五郎先生は、書き下ろしを生涯に二作しか残すことが出来ませんでした。一作目菊屋敷で、昭和二十年十月刊行。花筵は、二十三年四月に発刊されました。
山本先生は、持ち込みと書き下ろしがベストと思っていたようですが、戦後は注文原稿におわれて、時間的余裕もなくなったようです。作家として認められた証拠なわけですが、制約のない持ち込みが理想だったのでしょう。

ちなみに戦後の持ち込みは、日日平安のみでした。

気ままに書くのはいいけれど、もともと遅筆で思うように行かず、作品の上がらない先生は、このころ発表した作品がひどく少ない。貧乏にもこたえないといばったおたふく「きん夫人」が、いよいよ困って質屋に行く。たまたま箪笥をのぞいた周五郎、一枚きりの着物を見て、体を唐竹割りにされるほどの衝撃を受ける。
奥さんは終戦直後の数年間だけは、貧苦がつらかったという。山本周五郎も、あの箪笥の中身だけは忘れられなかったのだろう。以降、生活費のことでは奥さんにあまり面倒をかけなくなった。

山本先生の仕事から書き下ろしがなくなったのは、奥さん、きんべえへの遠慮もあったのかもしれません。

そんなわけで、山本周五郎がまたもや死力を尽くした小説「花筵」

聴いて下さい。

登場人物

お市……信蔵の妻。藩の追っ手のため姑と義弟と共に、各地を転々とするうちに花筵を学ぶ。
陸田(くがた)信蔵……勘定方元締役。お市の夫。藩政改革を図ろうとするが、生死不明となる。
陸田辰弥……次弟。よく肥えたのんびりや。
陸田久之助……三弟。お市と仲が良い。
磯女……お市の姑
石岱……医者
たみ……奥村の下女

渡辺左馬助……信蔵K同志
和吉……下僕
たみ……召使い
仁兵衛……老僕

丈助……辰弥と仲良しの老農夫
おげん……丈助の妻。信をとりあげる。
信……逃亡先で生まれたお市の娘
貞次郎……美野甚の主
万吉……美野甚手代
お梅……機子。お市になつく。

茂左衛門……お市の新しい潜伏先。元丈助の作男
へい……茂左衛門の息子。五つ
喜一……へいの友達

用語集

読過(どっか)……終わりまで読んでしまうこと。
星宿(せいしゅく)……星座。
青傘(あおがさ)……藍色の紙を貼った日傘。

半挿(はんぞう)……湯水を注ぐのに用いる器。柄のある片口の水瓶。
豪宕(ごうとう)……気持ちが大きく細かいことにこだわらない。豪放。
長持(ながもち)……蓋付きの長方形の大きな箱
油壺……髪油用の小形の壺
網代垣……細い竹や割り竹を、網代形に組んだ垣根
紅絹(もみ)……紅で染めた無地の平絹

無音(ぶいん)……久しく便りをしないこと。音信が途絶えること。
産褥(さんじょく)……出産の刻、産婦がつかう寝床。
印伝革(いんでんがわ)……羊やしかの革をなめして、染色し、模様を描いたもの。袋物などに使用される。

作柄(さくがら)……農作物の育ち具合や出来具合。
検見(けみ)……中世、近世の徴税法の一つ。
蘚苔(せんたい)……こけ
鍾愛(しょうあい)……たいそう好きこのむこと。大切にしてかわいがること。
夾竹桃(きょうちくとう)……常緑低木
惘然(もうぜん)……呆然

叙爵(じょしゃく)……爵位を授けられること。
なおざり……いいかげんにしておくさま
養嗣子(ようしし)……家督相続人となる養子
出頭人(しゅっとうにん)……主君の側にあって政務に参与する者
水禍(すいか)……洪水による災害。水難。
私曲(しきょく)……不正な手段で自身だけの利益を計ること。
欺謀(きぼう)……だまして人を陥れようとするはかりごと
胎動(たいどう)……母体内で胎児の動くこと
温気(うんき)……蒸し暑さ
世故(せこ)……世間づきあいのさまざまな事柄

藺(い)……いぐさ。茎が畳表、花筵の材料になる
光暈(こううん)……輝いている物の周辺に見える、淡い光の傘。
紅殻(べんがら)……べにがら。赤色顔料の一つ。

厭悪(えんお)……嫌い憎むこと。嫌悪
おぐし……頭髪の敬称。みぐし。
牢舎(ろうしゃ)……牢屋
千町田(ちまちだ)……千町もある田の意味で、広い田
篤実(とくじつ)……情が深く誠実なこと。

弁別(べんべつ)……物事の違いをはっきりとみわけること。
秕政(ひせい)……悪い政治。
私曲(しきょく)……不正な手段で自身だけの利益をはかること
瀆職(とくしょく)……汚職
感興(かんきょう)……何かを見たり聞いたりして興味がわくこと

襦袢……ジュバン。和服用の下着。
仮睡……カスイ。仮眠。
陪侍……バイジ・君主貴人のそばにつかえること
憂悶……ユウモン。思い悩み、苦しむこと。
徒食……トショク。働かないで遊び暮らすこと。
窮余……キュウヨ。追い詰められて、困ったあげく。苦し紛れ。
問罪……モンザイ・罪を問いただすこと
唱名……ショウミョウ・南無阿弥陀仏などと唱えること
遠侍……トオサブライ・主屋を離れた中門の脇などに設けられた警護の詰め所
かかりうど……他人の世話になって生活している人
艱難……カンナン困難に遭って苦しみ悩むこと
陰影……インエイ・物事の色音調子や感情などに含みや趣があること
襲封……シュウホウ・子孫または諸侯が領地を受け継ぐこと

この動画の目次

0:00 一の一
13:14 一の二
26:56 一の三
41:49 一の四
54:59 二の一
1:12:21 二の二
1:20:50 二の三
1:34:02 二の四
1:46:43 三の一
1:59:34 三の二
2:20:47 三の三
2:34:41 三の四
2:52:19 四の一
3:06:07 四の二
3:19:58 四の三
3:33:33 四の四
3:47:44 五の一
4:03:50 五の二
4:19:29 五の三
4:32:40 五の四

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