山本周五郎『扇野』【朗読時代小説】作業用BGM・睡眠導入などに  読み手七味春五郎  発行元丸竹書房

 

■虚空遍歴との共通性
(ネタバレありますので、ご注意を)
 設定はあれこれ違うのですが、長編【虚空遍歴】を連想させるような作品。ちなみに主人公は冲也とちがって、絵師(冲也は浄瑠璃作者)。冲也を支える女性芸妓に「おけい」という同名の人物が登場しますが、作者に思うところあったのでしょうか?(本作のおけいが悲しい人なので)
 冲也はかなり剣をつかい、おけいのことで彼を恨む侍たちをやっつけるシーンがあるのですが、栄三郎もおつるをおってきた二人の侍を退けています(ただし剣術をつかう描写はない)。
 もっとも短編と長編の違いがありますので、ストーリーの流れは別物ですかね。扇野はおわりもよし、爽快さも感じられるラストであるのに比べ、虚空遍歴は……

 どちらの作品も、芸に全てを投げて打ち込む姿は同じ(栄三郎は冲也ほど投げてないけれど)
 こうしてみると、冲也に必要なのは、導いてくれる師匠――先達だったのかな? と思います。そういうとおけいに悪いんですが。ちょうど伯山先生の、東玉と伯圓が公開されたので、そんなことを思ってしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=iEEpTroveFg

 扇野は、1954年(昭和29年)1~2月『面白倶楽部』に発表されたわけですが、虚空遍歴は、1961年(昭和36年)3月~翌々年2月『小説新潮』。ともに五十代での作品。

■虚空遍歴
前編 https://youtu.be/HGjbhb2x0Tw
中編 https://youtu.be/n8raCplQ364

■登場人物
三宅栄三郎(古渓)……絵師。旗本の三男。金右衛門から鳥羽城の襖絵製作を依頼される
三宅数右衛門……栄三郎の父。旗本。
伊織……栄三郎の長兄。
数馬……栄三郎の次兄。

角屋金右衛門……海産物問屋の主人。
おみね……金右衛門の女房。
おけい……金右衛門の娘。栄三郎を密かに慕う
おつる……芸妓。
おまさ……料理茶屋「桑名屋」の女中。
おさと……「桑名屋」の女中。
小花……芸妓。

石川舎人……家老。孝之介の父。
石川孝之介……藩の家老の長男。おつるを妾にしようと目論む。
横井宗渓……栄三郎の師。

■用語集
権柄ずく……権力に任せて、強引にことを行うこと
謹直(きんちょく)……慎み深くて、正直なこと
小格子(こごうし)……江戸吉原の、最も格式の低い遊女屋のこと
土留(どどめ)……土が崩れないように抑えるための止め物
町尻(まちじり)……町外れ
しもたや……商店でない普通の家
檜葉(ひば)……檜の葉
軟風(なんぷう)……そよ風
置屋(おきや)……芸者や遊女を抱えている家
辻地蔵(つじじぞう)……道ばたに立つ地蔵尊
詠嘆(えいたん)……物事に深く感動すること。感嘆。
落籍(らくせき)……芸者などをその家業から身を引かせること。身請け。
かねたたき……コオロギの一種で、雄は秋に、ちんちんと鉦を叩くような音でなく

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