【朗読一人でドラマ】死に誘う甘い一口。七之助捕物帳 『第二十巻、乞食の仇討ち』納言恭平著

納言恭平著 七之助捕物帳 乞食の仇討

七之助捕物帳 乞食の仇討

著:納言 恭平

作品について

本作は、納言恭平による「七之助捕物帳」シリーズの一編です。江戸の町を舞台に、岡っ引きの七之助親分が難事件に挑む痛快な時代ミステリーです。

物語は、枕橋の袂で一人の乞食が毒殺されるという衝撃的な事件から幕を開けます。単純な殺しに見えた事件は、やがて意外な人物たちの思惑が複雑に絡み合う、一筋縄ではいかない様相を呈していきます。江戸の町人文化や人情を巧みに織り交ぜながら、七之助の鮮やかな推理が光る、読み応えのある作品です。

あらすじ

ある朝、花川戸の七之助親分の元に、枕橋の乞食・辰が毒の入った粟餅を食べて死んだとの報せが舞い込む。現場に駆けつけると、日頃から辰と仲の悪かった女乞食のお仙が疑われていた。

しかし、捜査を進めるうち、事件の直後に現場を立ち去った謎の医者と、粟餅を渡したお大師参りの女の存在が浮かび上がる。さらに数日後、行方不明になっていた医者・宇津木北山の捜索願が出され、事件は混迷を深めていく。

そんな中、死んだはずの乞食・辰が七之助の前に現れ、事件の驚くべき真相を語り始める。一人の女の絶望と、それに巻き込まれた人々の悲劇が絡み合った、奇妙な「仇討ち」の顛末とは——。

主な登場人物

七之助 (しちのすけ)

主人公。花川戸に住む腕利きの岡っ引き。冷静な判断力と鋭い観察眼で難事件を解決に導く。

音吉 (おときち)

七之助の子分。元スリだが七之助を心から慕い、手足となって捜査に協力する。

辰 (たつ)

枕橋をねぐらにする乞食。殺されたとされるが、物語の鍵を握る重要人物。

お仙 (おせん)

辰と仲の悪い女乞食。事件の第一発見者であり、当初は容疑者と見なされる。

宇津木 北山 (うつぎ ほくざん)

材木町の医者。園遊会の余興のために乞食に変装したことで、事件に巻き込まれてしまう。

豊永 華翠 (とよなが かすい)

生花の師匠。不治の病と将来を悲観し、恐ろしい計画を実行に移す女性。

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Q&Aコーナー

物語に関するよくある質問をまとめました。クリックで答えが開きます。(ネタバレを含みます)

Q1: 豊永華翠は、なぜ乞食を毒殺しようとしたのですか?

A1: 彼女は特定の誰かに恨みがあったわけではありません。不治の病を患い、愛人にも捨てられるかもしれないという絶望から、いつでも死ねるように毒薬を手に入れていました。そして、その毒の効き目を確かめるために、事が大きくなりにくいと考えた乞食を標的にしてしまったのです。

Q2: 医者の宇津木北山は、なぜ乞食の辰と入れ替わったのですか?

A2: 町内の園遊会で開かれる「変装くらべ」で一等を狙うためでした。誰も見破れないだろうと考え、本物の乞食である辰に協力を頼み、衣装や持ち物をすべて交換して、乞食になりすましていたのです。

Q3: この事件の「仇討ち」とは、誰の何に対する仇討ちだったのでしょうか?

A3: 本来の仇討ちとは異なりますが、物語の中では、乞食の辰が、自分の身代わりとなって死んでしまった宇津木北山のために、犯人である豊永華翠を突き止めようとした行為を指しています。辰は北山に申し訳ないという気持ちから、石にかじりついてでも犯人を見つけ出し、七之助親分に引き渡すことで「かたき討ち」を果たそうとしたのです。

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