【朗読一人でドラマ】久生十蘭の平賀源内捕物帳 『其の二、長崎ものがたり』  ナレーター七味春五郎 発行元丸竹書房

 

 

 

 

平賀源内捕物帳

長崎ものがたり

久生十蘭

作品について

『平賀源内捕物帳』は、博覧強記の天才として知られる実在の人物・平賀源内を主人公に据えた、久生十蘭の代表的な連作短編ミステリーです。本作「長崎ものがたり」はその中の一編で、江戸、大阪、長崎という三百里も離れた三つの場所で、同日同時刻に同一人物によって殺人が行われるという、超自然的にしか見えない不可能犯罪に源内が挑みます。

蘭学の知識を駆使し、論理的な推理で事件の核心に迫っていく源内の姿は痛快そのもの。奇抜な着想と緻密な構成、そして格調高い文体が融合した、本格ミステリーの傑作です。

作者について

久生十蘭(ひさお じゅうらん、1902年 – 1957年)は、日本の小説家、演出家。その多才さと該博な知識から「多面体作家」「小説の魔術師」などと称されました。

ミステリー、冒険小説、ユーモア小説、現代小説、歴史・時代小説と、ジャンルを問わず数多くの傑作を残しています。緻密なプロットと華麗で知的な文体が特徴で、その作品は今なお多くの作家や読者に影響を与え続けています。『平賀源内捕物帳』のほか、『顎十郎捕物帳』『キャラコさん』などの作品で知られています。

本文

あらすじ

江戸で起きた不可解な殺人事件。被害者の若妻お鳥が死の間際に犯人として名を挙げたのは、唐通詞の陳東海。しかし、陳には鉄壁のアリバイがあった。同じ頃、大阪、そして長崎でも、お鳥の縁者が次々と殺害される。奇妙なことに、いずれの現場でも被害者は「犯人は陳東海だ」という言葉を残していた。

江戸、大阪、長崎――。三百里も離れた三つの場所で、同日同時刻に起きた連続殺人。一人の人間に実行可能なはずがないこの不可能犯罪の謎に、天才学者・平賀源内が挑む。被害者たちが最期に見た“陳東海”の正体とは?源内は、持ち前の科学知識と鋭い観察眼を武器に、事件の裏に隠された驚くべき「からくり」を解き明かしていく。

主な登場人物

平賀源内

物語の主人公。実在した江戸時代の天才学者。蘭学をはじめとする幅広い知識と好奇心で、難事件の謎を解く。

福介

源内に仕える実直な老僕。旅の供として源内を支える。

陳東海

唐通詞(中国語の通訳)。眉目秀麗な唐人だが、三つの殺人事件すべての容疑者とされる。

お鳥

江戸で殺害された最初の被害者。日本橋の廻船問屋の妻。

唐木屋利七

大阪で殺害された第二の被害者。お鳥の義兄。

お種

長崎で殺害された第三の被害者。利七の妻であり、お鳥の姉。

Q&Aのコーナー

江戸、大阪、長崎という三つの離れた場所で、同日同時刻に同一人物によって殺人が行われるという、一見不可能な謎の設定です。この超自然的にさえ思える犯罪に、天才・平賀源内が科学的な知識と論理的な推理で挑む過程が最大の見どころです。

実際には陳東海自身が三か所で殺人を犯したわけではありません。これは、幻灯機(マジックランタン)の原理を応用した巧妙なトリックでした。犯人グループは、蝋燭の光とレンズを使って陳東海の姿を壁に投影し、あたかも彼がその場にいるかのように見せかけました。その幻影に被害者が気を取られている隙に、共犯者が背後から殺害したのです。

源内は、物理的に不可能な犯罪であることから、必ず何らかの「からくり」が存在すると考えました。彼は蘭学の知識を活かし、長崎の犯行現場に残された銀の燭台と蝋燭の位置関係、そして壁の不自然な点から、幻灯機の仕掛けを見抜きました。蝋燭が特定の長さまで燃えると、その光がレンズを通して幻の像を映し出すというトリックを自ら再現してみせることで、事件の全貌を解明しました。

© – このページは久生十蘭の作品『平賀源内捕物帳 長崎ものがたり』を元に作成されました。

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