ファイヤーボーイズ

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 消防は命をさらす仕事と言うこともあって、横のつながりが深い。高橋たちは、三人の親代わりのような心持ちでいる。それだけに、つい口うるさくもなる。
 高橋は、デスクの三人を見ながら、長いつきあいになる。宮田にぼやいた。
「あいつはどうしようもねえなあ。あのばかを見てるとやきもきする。あのやろう、いつか、現場でひどいめにあうぞ」
「行動力のある男ですからね」と宮田はおっとりしている。「先日の火事も、立派に消し止めましたよ」
「小火じゃあなあ」高橋は嘆息した。少しまじめな顔になる。「あいつ、ほんとにひどい火事場には、まだ出たことがなかったな」
「一度経験すりゃ、やつもおとなしくなりますよ」
「あまりしおらしくなられても困るぜ」高橋は宮田との話を切り上げ、「文吾お、今度学校に、防災指導に回るからよ、そのときはしゃんとしろよ」
「わかってますよ」
 文吾の言葉が終わらぬうちに、出場のサイレンが、所内に響いた。スピーカーが火災指令をがなりたてる。
『第一出場指令! 現場は、高知町、5ー1ー6! 出場隊、長谷野辺1!』
「高知町か」
 駒野が立ち上がった。所轄のなかでも、かなり近い。
 文吾は訓練かと疑った。高橋がそんな考えを、否定するかのように怒鳴った。
「文吾! 来やがったぞ、用意しろお」
「お、おう」

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