山本周五郎/人情裏長屋  【朗読時代小説】

 

■あらすじ
 1948年(昭和23年)7月 『講談雑誌』折箸蘭亭名義での発表。
 松村信兵衛は、十六店と呼ばれる裏長屋に転がりこんだ浪人。この男、人品骨柄がよくて、金回りもよろしく、毎日酒をのみ、毎日人助けをして世を暮らしている。その正体は誰も知らない。
 沖石主殿というおなじく浪人に身をやつす侍が長屋に越してきたことから、生活は一変してしまう。嬰児を残して、出奔してしまったからだ。
 周囲が止めるのもきかず、信兵衛は赤子をしょって、好きな酒もたち、剣もおいて、蕎麦屋台をひきはじめる。鶴之助を立派に育てようと決意して店。

■登場人物
松村信兵衛……浪人。道場破りをして金を稼げるほどの剣の達人で、貧しい長屋の人たちの面倒をみるお人好し。
重助……夜鷹そば屋。信兵衛の隣に住む老人。
おぶん……重助の孫娘。信兵衛の世話をしている。
沖石主殿……十六店長屋に越して来た。浪人生活の中で、妻を亡くしている。
鶴之助……主殿の子。

又平……居酒屋「丸源」の主。
なべ公……丸源の小僧。
虎……長屋の住人。
熊公……同上。
竹造……同上。
八……同上。
平七……十六店長屋の差配。
定吉……酒屋「三河屋」の小僧。
折笠五郎左衛門……神伝流道場の道場主。信兵衛に道場破りをされる。
太田某……折笠道場の師範代。

■用語集
御落胤……身分の高い人が、正妻以外の、身分の低い女性に産ませた子どものこと。
嘲弄(ちょうろう)……あざけり、からかうこと
白痴(こけ)……精神遅滞
火見櫓(ひのみ)……火災を発見するためのやぐら。頂上につるした半鐘や太鼓を鳴らした。
嬰児(えいじ)……乳飲み子。
店賃(たなちん)……家の借り賃。家賃。
矢声(やごえ)……矢叫び。矢を射あうときの叫び声
懸隔(けんかく)……非常に差があること。
凝集(ぎょうしゅう)……散らばっていたものが、一つに集まり固まること
不日(ふじつ)……日数を余りえず、すぐであること
市井(しせい)……ちまた。人が多く集まり住むところ
蹣跚(まんさん)……よろよろと歩くさま
差配(さはい)……所有者のかわりに、貸し地や家の管理をする人
番所(ばんしょ)……番人が詰めるための施設。江戸では町奉行所もさすが、辻番所、橋番所、木戸番屋、自身番屋などもあった。
てんで……まるっきり。まったく。てんから。
人別(にんべつ)……人別帳の略
こぬか雨……霧雨
忿怒(ふんぬ)……ひどく怒ること。
鼬の道……行き来交際音信がとだえること
頓才(とんさい)……頓知の才
歯牙(しが)……歯
咀嚼(そしゃく)……口の中でよくかみ砕き味わうこと
些少(さしょう)……数量や程度が僅かなこと
ほろ蚊帳……ほろのようにつくった幼児用の小さな蚊帳

■この動画の目次
0:00 一  おちぶれて来る人の寄り場所
12:40 二 相手を立てて、それからの沙汰
25:07 三 不幸は友を伴れて来る故事
37:15 四 蕎麦は夜泣きの子も育つなり
49:01 五 またたちかえるみな月の宵

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