「浪人一代男」 山本周五郎の傑作短編です。剣の達人だが、藩を救うために罪人として、国を追われた男が、乳兄弟の姫を救うために再び立ち上がる!

 

■あらすじ
 1936年(昭和11年)9月 『講談雑誌』にて公開。翌年、「青空浪士」として映像化。製作は、新興キネマ(京都撮影所)主演は、大友柳太郎。
 御家騒動にまきこまれ、父は刑死。藩を放逐された津村三久馬は、市井に身を落とし、悶々とした日を送る。剣の腕の立つ彼は、いつか「業平浪人」と呼ばれ、新銭座の名物男となっていた。そんな彼のもとに、旧藩の侍が訪ねてくる。乳兄弟であった姫の苦況を救ってくれというのだ。虫のいい話に三久馬は、そっぽをむくが……

■登場人物
津村三九馬……太田原藩の浪人。お家騒動で父が諫死。自身も藩を下司払いされる。
お紋……女白浪。祭りの夜に仲間を救われて以来、三九馬に恋慕する。
津村宗兵衛……三九馬の父。
太田原信敏……藩主。暗愚な質。
不二緒姫……三九馬と乳兄弟。男子がないため、婿を取ることになる。
谷沢曹太夫……国家老。我子を世継ぎにしようと画策する。
戸田竜之助……采女正の三男。不二緒姫の婿。

深井孫七……太田原藩士。不二緒姫派。
曽根甚右衛門……不二緒姫派。
渡辺蔵人……不二緒姫派。

柚木久右衛門……柚木道場の主。
丸川糺(ただす)……曹太夫派。太田原藩士。
鴨沢藤吉……曹太夫派。
大村武兵衛……曹太夫派。

■用語
縮緬(ちりめん)……表面に細かいシボ(凹凸)のある織物。
新銭座(しんせんざ)……ぜにざ、と読みそうになりましたが。芝の新銭座には、慶應義塾後があるそうで。

町役人(まちやくにん)……「ちょうやくにん」とも。読み方は半々程度の割りでして、今回はまちやくにんに。江戸では、町人地を、「ちょう」と読み、武家地では、「まち」と読んだそうですが、地域差があるんでしょうか? 詳しい人いたら、教えてください。
酒肴(しゅこう)……酒と料理。
奸黠(かんかつ)……悪賢いこと。狡猾。
嚇怒(かくど)……激しく怒ること。
哀傷(あいしょう)……人の死を悲しみ嘆くこと。
お乳人(おめのと)……乳母。
別懇(べっこん)……特に懇意なこと。昵懇。
入来(じゅらい)……他人の来訪を敬って云う。にゅうらい。
害心(がいしん)……害意。
貸借(たいしゃく)……貸すこと借りること。
痛忿(つうふん)……おおいに憤慨すること。
時疫(じえき)……はやりやまい
説伏(せっぷく)……相手を説き伏せる。説得。
小店(こみせ)……妓楼の小規模の物。
野末(のずえ)……野の外れ。野の果て。
浅妻舟(あさづまふね)……歌舞伎舞踏。
嫋々(じょうじょう)……風がそよそよ吹く様。
哀音(あいおん)……悲しげな音や声。
重囲(じゅうい)……幾重にも取り囲むこと。
爛酔(らんすい)……泥酔。正体がなくなるほど酒に酔うこと。
まんさん……ひょろひょろとあるくさま。
辻待(つじまち)……車夫などが、道ばたで客を待つこと。
酔歩(すいほ)……酒に酔ってふらふら歩く。
酒手(さかて)……酒を買う金。
そぼふる……雨がしとしとふる。
莞爾(かんじ)……にっこりと笑う。ほほえむさま。
七生(しちしょう)……七度生まれ変わること。永遠。しちせい。

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