山本周五郎『酔いどれ次郎八』
丸竹書房がお届けする珠玉の時代小説、オーディオブックの世界へ!
友のため、恋人のため。自ら汚名を被る武士の生き様を描く感涙の物語。
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「酔いどれ次郎八」主な登場人物
矢作 次郎八(やはぎ じろはち)
主人公。播磨国龍野藩士。文武に優れ、友や許嫁を深く思いやる心を持つ。親友と許嫁の幸せのため、自ら悪評が立つよう振る舞う。
岡田 千久馬(おかだ ちくま)
次郎八の親友で同僚の藩士。次郎八と共に仇討ちの旅に出る。気が弱く、常に次郎八に庇われてきた。
ゆき江(ゆきえ)
馬廻り組頭・茅野総造の娘で、次郎八の許嫁。次郎八の帰りを待ち続けるが、運命のいたずらに翻弄される。
森井 欣之助(もりい きんのすけ)
次郎八と千久馬の共通の友人。江戸から帰国し、二人の間に起きた悲劇を知り、彼らの苦悩を理解しようと努める。
杉原 喜兵衛(すぎはら きへえ)
龍野藩の元横目。同僚を斬り、藩の名剣「兼光」を奪って薩摩へ出奔する。次郎八と千久馬の仇討ちの相手。
「酔いどれ次郎八」物語と朗読
(ここに「酔いどれ次郎八」のYouTube動画が埋め込まれます)
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あらすじ
播磨国龍野藩の若き武士、矢作次郎八と岡田千久馬は、藩の重宝を奪って薩摩へ逃れた裏切り者を討つという密命を帯びる。三年もの間、薩摩藩で足軽として潜伏し、ついに本懐を遂げる二人。しかし、次郎八は千久馬を逃がすために一人残り、消息を絶つ。一年後、次郎八の許嫁であったゆき江は、親友の千久馬と結ばれる。だがそこへ、死んだはずの次郎八が帰還する。かつての面影はなく、醜い火傷の痕と荒んだ心を持つ「酔いどれ」と成り果てた次郎八。彼はなぜ、わざと親友と許嫁を苦しめるような振る舞いをするのか。その痛ましい自己犠牲の裏に隠された、あまりにも深い友情と愛の真実とは……。
Q&Aコーナー
はい、作中で「由来薩摩は境戒が厳しく、幕府の隠密でさえ入国する事の困難をもって有名である」と描かれている通り、江戸時代の薩摩藩(島津家)が他藩に対して非常に排他的・閉鎖的な姿勢をとっていたことは史実としてよく知られています。
これにはいくつかの理由が挙げられます。
- 地理的要因:日本の南西端に位置し、中央の権力から距離があったこと。
- 密貿易の維持:幕府の禁令下で琉球(実質的な支配下)を通じた中国などとの密貿易を行っており、その秘密を守るため、外部の人間の立ち入りを厳しく制限する必要がありました。
- 独自の軍事・統治体制:「外城制度」といった独自の地方支配体制や、藩内に多くの兵力を保持していたため、幕府の監視や介入を極力避けたかったという背景があります。
これらの理由から、薩摩藩は街道の関所を厳しくし、他藩の者が領内に入ることを非常に困難にしていました。物語の中で次郎八たちが潜入に三年の歳月を要したという設定は、こうした史実を背景にしたものであり、彼らの任務の困難さを際立たせるための説得力のある描写となっています。