作品と作者について
「武道仮名暦」とは
「武道仮名暦」(ぶどうかなごよみ)は、山本周五郎による短編時代小説です。南部藩の若き同心組頭・戸来伝八郎を主人公に、藩を揺るがす大きな陰謀と、彼の恋の行方を描いた作品です。江戸での三年間の務めを終え帰国した伝八郎が、旧敵との喧嘩沙汰や、伯父の娘であるお縫との複雑な関係に直面する中、津軽藩による国家老・津田将曹を操った陰謀の渦中に巻き込まれていきます。武士としての忠義、仲間との友情、そして一人の女性への想いの間で揺れ動く主人公の姿が、緊迫感あふれるストーリーの中で鮮やかに描かれています。
作者:山本周五郎(やまもと しゅうごろう)
山本周五郎(1903年6月22日 – 1967年2月14日)は、日本の小説家。本名は清水三十六(しみず さとむ)。山梨県出身。本名では作品を発表せず、生涯を通じて「山本周五郎」のペンネームで執筆活動を行いました。その作品は時代小説、歴史小説、現代小説と多岐にわたり、庶民の哀歓や武士の生き様、人間の尊厳などをテーマにした数多くの名作を生み出しました。
代表作には『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『日本婦道記』『青べか物語』『季節のない街』などがあり、その多くが映画化、テレビドラマ化されています。大衆文学の分野で絶大な人気を博しながらも、文学賞の受賞を固辞し続けたことでも知られています。その作品は、深い人間洞察と温かい眼差しに貫かれており、今日なお多くの読者に愛され続けています。
「武道仮名暦」物語と朗読
あらすじ
三年間の江戸詰から帰国した南部藩の同心組頭・戸来伝八郎。帰る早々、旧敵との喧嘩騒ぎを起こし、伯父の池田玄蕃を呆れさせる。しかし、その裏では津軽藩による国家老を巻き込んだ陰謀が進行していた。伝八郎は、友人の曽根忠太や山田募と共に陰謀の真相を探るが、事態は同心組全体の脱藩騒動へと発展。さらに、従妹のお縫をめぐる恋敵・海部信之介がその騒動の中心にいることを知る。伝八郎は、藩の危機と恋の行方、二つの難題にどう立ち向かうのか。武士の意地と忠義、そして不器用な恋心が交錯する、痛快時代活劇。