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【朗読一人でドラマ】七之助捕物帳 『第十六巻、大江戸二人娘 – 謎の貼り紙と消えた娘!七之助が暴く江戸のからくり』納言恭平著 ナレーター七味春五郎 発行元丸竹書房

 

 

 

作品と作者について

「七之助捕物帳」シリーズとは

「七之助捕物帳」は、納言恭平によって昭和初期に書かれた人気の捕物帳シリーズです。江戸の花川戸を縄張りとする町方の御用聞(岡っ引)・七之助と、その手下である乾分の音吉が、江戸市中で起こる様々な難事件や珍事件を、鋭い観察眼と人情味あふれる裁きで解決していく物語です。軽快な筆致とユーモア、そして江戸の庶民の暮らしぶりや風俗が生き生きと描かれているのが特徴で、当時の読者から広く親しまれました。

作者:納言恭平(なごん きょうへい)

納言恭平(1900年 – 1949年)は、本名を奥村五十嵐といい、熊本県出身の小説家です。新潮社で編集者として勤務した後、作家活動に入りました。特に時代小説、捕物帳の分野で健筆をふるい、「七之助捕物帳」シリーズのほかにも多くの作品を残しています。ユーモアとペーソスを交えた作風で、大衆文学の世界で人気を博しました。また、捕物作家クラブ(後の日本作家クラブ)の発起人の一人としても知られています。

「大江戸二人娘」主な登場人物

七之助(しちのすけ)

花川戸の御用聞(岡っ引)。冷静沈着で鋭い観察眼を持ち、数々の難事件を解決してきた江戸一番の評判を持つ。人情にも厚い。

音吉(おときち)

七之助の乾分(手下)。お調子者だが、親分である七之助を献身的に助け、時には機転を利かせて事件解決に貢献する。

彦八(ひこはち)

小間物屋。音吉の相棒のような存在で、しばしば音吉と行動を共にする。やや間の抜けたところがある。

相模屋 三右衛門(さがみや さんえもん)

芝三田の強欲な質屋。「乞食相模屋」とあだ名されるほど金に汚く、多くの人々から恨みを買っている。娘のお香代を溺愛している。

直助(なおすけ)

相模屋の番頭。主人には忠実だが、お紋やお冬の境遇に同情し、お香代と共に大胆な計画を実行する。義理堅く、情に厚い一面も持つ。

お香代(おこうよ)

相模屋三右衛門の一人娘。箱入り娘として育てられるが、直助の計画に協力し、事件の重要な役割を担う。直助とは主従を超えた絆で結ばれている。

お紋(おもん)

元芝口の糸屋・百蔵の後家。相模屋によって夫と義妹お冬が不幸になったため、強い恨みを抱いている。半纏姿の威勢のいい三十女で、騒動の発端となる行動を起こす。

お冬(おふゆ)

お紋の亡夫・百蔵の実妹。兄夫婦を助けるため、品川の廓に身を沈めた。直助やお香代の同情を集める存在。

「大江戸二人娘」物語と朗読

(https://www.youtube.com/watch?v=YUzMiBxu30U)

オーディオブック動画を視聴(準備中)

あらすじ

品川で見つかった一枚の「白米大安売り」の貼紙。これが江戸の町を揺るがす大騒動の発端となる。強欲な質屋「乞食相模屋」を巡り、町民の怒りが爆発。その裏で、相模屋の娘・お香代の誘拐事件が発生し、花川戸の七之助が捜査に乗り出す。二通の脅迫状、晒し者にされた番頭、そして健気な姉妹の存在。複雑に絡み合う事件の真相を、七之助が鮮やかに解き明かす!

白米大安売り

 朝だ。すじの緩んだ間の抜けた顔を、二つ、品川の通りに並べているのは、お馴染みの、花川戸の御用聞七之助の乾児音吉と、小間物屋の彦八。陽気の加減か、思わぬお鳥目にでもありついたのか、昨夜はどうやら品川泊りだったらしい。

 田町四丁目から、三田の通へ曲った。すると、そこの町木戸の前に、五六人の人集りがしている。

 駆けつけてみると、町木戸に貼りつけてある、一枚の貼紙。見るなり、音吉が、

「ほ、ほう!」

 と、頓狂な叫びごえをあげた。

「なんの貼紙ですかい、哥兄さん。あっしらは字が読めねえんで、誰か通りかからねえかと待っていたところなんだ」

 その中の一人が言った。

「ちぇ、しようのねえ人達だな。おやっ、こりゃあ、お前、米の大安売じゃねえか。百文につき二升一合五勺買えるってんだぜ」

「えっ! 百文につき二升一合五勺? べらぼうめ、そんなやすい米ってあるもんかい。哥兄さん読みちがいじゃねえのか」

「ちぇ、せっかく親切に教えて上げているのに、なによう言やがるんでえ」

「ふうむ! どこですね、いったい。そんな米の大安売をやろうてえのは?」

「今読んでやらあ。此の節米穀高直に付、施しのため、百文につき白米二升一合五勺に売り渡し候。望之者は五月五日より三日の間可」被」参候。芝三田相模屋三右衛門」

「なんだって。そこの乞食相模屋か」

「乞食相模屋ってなんだい?」

「乞食相模屋ってえなあ、お前さん、三田界隈で知らねえ者のねえ質屋だね。くさる程金を持ってるくせに、おっそろしくしみったれてやがるから、乞食相模屋ってんだ」

「しかし、珍らしいこともあればあるもんだね。あの乞食相模屋が、施しのため持米の安売をやらかすなんて」

 味噌漉を下げた裏長屋のおかみさんが、人群の中からわめいた。気がつくと、貼紙の前の人集りは、いつの間にか二十人ばかりにふえている。

「ずいぶん貧乏人泣かせをしてやがるからな。罪亡しだろう」

「そんなこたあどうでもいい。買い損ねたら大へんだ」

 わいわいと騒ぎ出した人集りは、なかばは、先を争って、三田の大通りを赤羽橋の方角に向って駆け出し、なかばは、蜘蛛の子を散らすように、めいめいの裏長屋へと走り込んで行く。

泣っ面の乞食相模屋

 後日の調査によると、相模屋三右衛門の米安売の貼紙は、芝高輪界隈はいうに及ばず、遠く、本所、深川あたりの町木戸や、橋の欄干などに貼り散らされてあったのだという。

 だから、音吉と彦八が、三田四国町の相模屋の前に駈けつけた時には、そこの店先には、すでにもう、数百人の人群が、なにか声高に罵り合いながら、ひしめいていた。

「やっちょる、やっちょる」

 なにをやっちょるのかわからないくせに、彦八が、嬉しがった。

 威勢のいいのが二三人、人々の前方に出はだかって、番頭を相手にいきり立っている。

「てめえじゃアわからねえ。乞食おやじを出せ、乞食おやじを」

 なにやらどぎつい刺青の片肌押脱いで、豆絞りの手拭を捩り鉢巻にしたのが、拳を振り上げてそう叫んだ。

「そうだとも。てめえみたいなおたんちんの言訳なんか、聞いたってはじまるかってんだ」

 うしろの人群の中から、女の声が啖呵を切った。半纏を着た三十女だ。いい横顔をしていやがる。裏長屋の山の神にもこんな掘出物があるのかと、音吉が、ついうっとりとなりかけた時、

 うわあっ!

 人群がどよめいた。

 店のうしろのしきり戸が開いて、赤ら顔の五十男が、蟹股を小刻みに、ひょこひょこと現われたのだ。

 見るからに貪慾そうな肉のたるんだ口元に、人を食ったような微笑を浮べ、人群のいきり立った感情を押える大袈裟な身振には、自信と落着があった。

「てまえが当家の主人でございます」

「知ってらい!」

 という半畳が、どこからか飛んだが、後は一瞬、水を打ったような静粛に返った。ともかくも、一応、おやじの言分を聞いてやろうという、人々の顔つきなのだ。

「皆さんに御迷惑をお掛けしてまことに相すみませんでした。しかし、あの貼紙は、当家に於きましては、夢にも知らんことでございます。大方、誰かのいたずらでございましょう。早い話、相模屋三右衛門は質屋稼業でございます。米を売る筈がございません」

「だって、お前さんとこには、深川の倉庫に、米を六千俵も囲っているというじゃあないか」

 とつぜん、又しても半纏着の三十女の声だった。三右衛門は、声の主を眼探りながら、うろたえた口が、言葉にはならず、蟹みたいに泡をふいた。

「ほんとか、そりゃあ?」

 刺青の片肌脱ぎが吹鳴り声をあげた。

「ほんとですともさ。ですから、乞食相模屋は、当節の米の値上りで、それだけでも大儲けをしているんですのさ」

「そりゃあ、怪しからん」

「五百俵や千俵がとこ、ただでくれたっていいじゃあねえか」

「きたねえことを言うな。おれたちゃあ、乞食じゃあねえからただでもらうため言わん。貼紙の約束どおり、百文で二升一合五勺、買ってやるんだ」

「そうとも、買ってやるのさ。あたしゃあ、子供の簪を質に曲げて、百文こしらえて来たんだからね。米を売ってくれるまで、ここを動きゃあしないよ」

「おいらあ又、日雇人夫の仕事を休んで来てるんだ。どうしたって、手ぶらじゃあ、帰られねえ」

 口々に罵り騒ぐ声々に、施すすべもなく立往生をしてしまった三右衛門の耳に、番頭が、口を当てて、なにかささやいた。一瞬、不快の翳が三右衛門の顔を掠めたが、すぐ、諦めたように領ずき返すと、又、人群に向き直って、

「皆さん。深川の倉庫に米俵を囲っているなんて、そんなことは根っからの嘘です。しかし、折角、皆さんも御足労下さったんですから、売る米はございませんが、そのかわり、お一人さんに二百文ずつ差上げたいと存じます。どうか、それで御勘弁下すってお引取りを願います」

 わあっ!

 と、歓声があがった。

「乞食じゃアねえや。銭なんか貰えるか」

 なぞと、憤然といきまく声もあったが、貰え貰え、くれるというのを遠慮するこたあねえ、という輿論に、忽ち圧倒されてしまった。

 刺青が、人群の中からとび出して行った。群衆整理の役を買って出たのである。

「しずかに。しずかに。貰い損なやしねえんだから、先を争っちゃあいけねえ。怪我人でも出した日にゃあ、折角の施しがなんにもならなくなる」

 と、彼は得意気に角ばった頤を振りまわすのだった。

 何杯か、一文銭を盛った笊を、丁稚共が奥から運び出した。

 次々に、三右衛門と番頭の手から貰った二百文を、手拭に包んだり、両手に掬ったりしながら、人々は、今はおとなしく店の外に出て行くのであった。

「おや?」

 音吉は、掌中の玉を取り落したような失望の呟きを、そっと洩らした。半纏をひっかけたいい横顔の三十女の姿が、いつの間にか消えてしまっているのだ。

「彦、出よう」

 二百文にありつこうなんてさもしい根性は持っていないので、音吉は、彦八を促して外へ出た。しかし、なにか起るかも知れない期待はまだ十分に残っている。二人は、その期待に引止められて、ぼんやりと近所の軒下に佇んでいた。

 掃き去られたように、最後の一人までが乞食相模屋の前から消えると、丁稚共の、脅えた顔が隠見して、あわただしく店の戸が引かれてしまった。

「いよいよ、幕切れかな」

「そうらしいな」

 ポツリと、言葉を交し合った音吉と彦八。しかし、思い切り悪そうに、二人はまだ、その場を去ろうとはしないのだ。

「来た、来た」

 やがて、彦八がはしゃいだ声を出した。

 五六人の、山の神の一かたまりだ。うらめしそうに、乞食質屋の閉された戸の前に立って、

「なあんだい、戸を閉めてしまやがった」

「二百文稼ごうと思って、洗濯物を放り出して駈けつけたのにさ」

 ぼやき合っているうちに、一組、又一組。二百文の噂を聞きつけたらしい貧民共が、集るわ、集るわ。小半刻も経った頃には、相模屋の前の大通りが、幾千とも数知れない人群のために埋ってしまった。

 さっきどころの騒ぎではないのである。

「戸を開けろ!」

 と——どなる。

「二百文寄越せ!」

 と——わめく。

 塀ごしに、馬糞や馬の草鞋が投げ込まれる。礫が飛ぶ。

 町役人が出張して、制止に声を鳴らしはじめたが、いきり立った人群の感情には、焼石に水の役目にも立たなかった。

 とうとう、鳶口をかついだ火消人足の一隊が出動した。烏合の人群はたじろいたが、しかし、遠巻きに罵りさわいだり、石を投げたり、容易に引取る気配は見せないのだ。夜に入っては弥次馬も加わり、人のいきおいは、かえって盛り返したかに見えた。

 しかし、五ツを過ぎ、四ツに近くなると、人群は、さすがに疲れを見せはじめた。一組、又一組櫛の歯が欠けるように、人影が減って行く。

「兄貴、今度こそ、ほんとに最後の暮らしいね」

「そうらしい。うむ、そう思ったら、急に腹が減って来やがった」

「あたりきよ。朝っから、水一滴、飲んでねえもの」

「ちげえねえ。ハハハハ……」

 空っぽの腹の皮を撫でながら、面白そうに笑い合った音吉と彦八。

太鼓橋の晒者

 罪な貼紙の悪戯から、三田四国町の乞食相模屋が、ひどい目に合わされた翌朝のことだ。目黒行人坂の太鼓橋の袂に、おそろしく念入りに仕組まれた、風がわりな悪戯が発見された。一人の番頭風の若い男が、荒縄で橋杭にしばりつけられ、そのかたわらには、御丁寧にも、物々しく高札と大鋸まで揃っていようというのである。

「わあっ! 晒者だ、晒者だあッ!」

 一番先にそれを見つけた八百屋の小僧が、きもをつぶしてわめき立てると、わあっ、と町中が沸き立って、太鼓橋の袂には、忽ち、黒山の人集りをつくってしまった。夜が明けたばかりのこととて、ねぼけ眼をこすっている奴が多い。はだしのまま飛び出している男があるかと思うと、寝巻一枚の女も混っていようという繁昌ぶり。

 道具屋の隠居が、大声で高札の文句を読み上げた。

「ええと、何々。浅草聖天町、無宿鼠の甚平。此者、昨年中より、市内諸所の旗本屋敷、商家に押入り、婦女を姦し、金品を強奪し、逆罪至極に付、町中引廻し、其上、於太鼓橋晒候内、諸人勝手次第のこぎり引に致させ、はりつけに行う者なり。五月六日。奉行」

「ちっ、この悪党奴!」

 気の早いのが、かっと痰を吐きかけると、もう一人の荒っぽいのが、いきなり大鋸の柄にとびついた。

「わあっ!」と、晒者は仰天して、「ち、ち、ちがいます。あっしゃあなんにも知らないんだ。か、かんべんしておくんなさい」

「待て待て、平の字」

 道具屋の隠居も、びっくりして、あわて者の腕を押えた。

「どうして止めるんですか? そんな悪党を、のこぎり引にしたっていいじゃねえか。諸人勝手次第と、高札の文句にも書いてあらあ」

「だが、どうも、この晒者はおかしい。ここは日本橋じゃねえからのう。太鼓橋の晒物なんて、聞いたことがねえ」

「ははん。そう言えばそうだ」

 あわて者は、残念そうに、大鋸を元の場所に戻した。

「さようでございます。手前は、悪人共にかどわかされて、こんな目に会わされたのでございます。手前は、三田四国町の相模屋の奉公人で、直助と申します。お慈悲でございます。お願いでございます。どうか、この縄を解いてやって下さいまし」

 晒者は、ここを先途と哀訴歎願した。しかし、人々は当惑顔を見合せるばかり。誰あって、進んで縄を解いてやろうとする者はない。

「お前の言うことは、どうやらほんとうらしい。しかし、おれたちとしては、うっかり、手を出すわけにゃあ、いかねえよ。平の字、お前、自身番まで、一っ走り、届けに行ってくんねぇ」

 道具屋の隠居は、こんな世話ごとの取りさばきには、要領がよかった。

「よし来た!」

 あわて者の平六が空脛をとばして走り出すと、隠居は、鼻をつき合わせるばかりに、晒者の前にしゃがみ込んで、

「三田四国町の相模屋といやあお前、昨日、えらい目に会った質屋じゃねえのか?」

「へえ。さようでございます」

 がくんと、うなだれていた顔を上げて、相模屋の番頭の眼に、希望の光が浮んだ。

「どうしてこんな目に会ったんだ?」

「じつは、こうでございます」

「うむ」

「あの騒ぎの最中に、誰のしわざか、脅かしの凄文句を並べた封じ文を残して行った奴がございます。まだまだ、これんばかりのことで収まりがつくと思っていたら大間違いだ。いまに、もっともっと泣っ面を掻かせてやるから覚悟をして居れ。――と、まあ、こういう意味の文句でございました。ですから、手前共は、店の戸を閉め、鳶の衆に来て頂いてからも、どうして、生きた空はなかったのでございます。どこからか石は投げ込まれる。馬の草鞋がとんで来る。こうなりますと、主人の三右衛門にとりまして、一番案じられるのは、お香代さまの身でございました。ええ、え、主人の三右衛門は、世間さまから乞食相模屋だなんて、蔭口を利かれているくらいでございますから、人並以上にお金の好きな方ではございますが、一粒種のお香代さまには、眼がないのでございます。それで、主人が手前を呼んで申しますには、こんな様子では、いつなんどき、どんなことが起るかも分らない。弥次馬共に暴れ込まれて、お香代に怪我でもさせた日には取り返しがつかないから、お前、お香代を護って、白金町まで送ってくれと、仰言るのでございます。白金八丁目には主人の弟にあたる方が雑穀屋を営んでいるのでございます」

「ふむ。そこでお前は、その箱入娘を、無事に、白金八丁目まで送り届けてやったのかい?」

「ところが」と、直助は、急にしおれた顔をして、知合の駕籠屋を、そっと裏口から呼び込んで、お香代さまの身柄を送り出したまではうまく行きましたが、白金八丁目まではもう一息という瑞聖寺のところへ差しかかりますと、あそこの塀際のくらがりから、いきなり、五六人の覆面の男がとび出して参りまして、あっと驚く間もなく、その中の一人の奴に当身を食わされまして、それっきり手前は気を失ってしまったのでございます」

「それじゃ、お香代という娘も、その後どうなっているかわからんのだな?」

「へえ。夜露に打たれて気がついた時には、手前はもう、ここで、こんな目に会っていたのでございます」

「ふうむ、そうか。それじゃ、なんだな、誰か、三田の相模屋まで、一っ走りしてくれんといかんな」

「あっしが参りやしょう」

 名乗り出たのは、真先に、直助の顔に痰を吐きかけた、棒手振の角二郎だ。

娘の抵当(カタ)に千両箱

 その翌朝。

 花川戸の御用聞七之助は、八丁堀与力成瀬陣左衛門の声がかりで、三田四国町の乞食相模屋へ乗り込んで行った。

 七之助、御用聞では江戸第一の評判を取っているだけに、相手の心を見抜く眼力は鋭い。三右衛門の語る、事件の一部始終を聞き終って、

「ははあ、この男、なにか大事なことをかくしているな」

 と、にらんだ。

 そう言えば、どことなく、七之助の登場を煙たがっているような様子もある。

「こう、相模屋、一昨日からの一件に関係のあることなら、下手に出し惜みをしねえでよ。なにもかも、さっくばらんに吐き出してもらいてえんだ」

「え、なにを仰言います。あっしがなにを隠しごとなんか致しましょう。親分さんの御霊力で、一日も早く、悪党の顔を見てえのが、あっしの念願なんですもの」

「ハハハハ。おれのこの眼は、だてや酔狂でくっついているんじゃ無え。おれがこうだと睨んだ眼に、狂いのあったためしあ無えもんだ」

「いえ、親分さん……」

「ちぇ、この野郎、石でも抱きてえんでげしょう。抱きたかったら、存分に抱かせておやんなさいよ、親分」

 音吉が、たまりかねたように、かたわらから我鳴り立てた。

「そ、そんな無法なことを」

「なにが無法なんでえ。てめえみたいな業つくばりは、石でも抱かさなきゃあ、実を吐くじゃ無え」

「まあ、そういきり立つなよ、音」と、七之助は音吉をなだめて、「おらあ。拷問に掛けるなんて、野暮な詮議はしねえ流儀だ。そんなことをしなくたって、知りたいことは必ず知って見せる。下手な隠し立てをしておいて、よそからそれが発れたら、お前も困るだろうと思うだけのことさ。おらあなあ、相模屋、人に嫌われる御用聞なんてしょうべえはしていても、情には脆え男の、つもりだ。人に知られて困ることなら、おれの胸三寸にしまっておこうじゃねえか」

 諄々と説く七之助の言葉に、三右衛門の頭は、次第に低く下って行ったが、

「お見外れ申しやした、親分」

 がばと手をついて、そこの青畳にポタポタと雫を撒いた。

「じつあ、今朝程、雨戸を繰りますと、こんな封じ文が、雨戸の隙間から、投げ込んでありやしたんで」

「えっ、手紙」

 なににおどろいたか、七之助の声は、思わず高かった。ひったくるように受け取った七之助の顔に、見る見る浮ぶ不審の色。

(お父さま。お香代は無事でいますから御安心下さいませ。けれども、ここの家の人がしばらくも眼をはなして下さいませんので帰ることができません。ここの家の人は、お父さまがお金を千両ほど御調達下されば、お香代を帰してくれると申します。どうぞ、五月七日の夕七ツ刻、麻布芋洗坂の空地まで、直助に千両箱を持たせてやって下さいまし。もしお父さまがお金を惜んだり、奉行所に訴えたりなすったら、お香代の体はどうなるか分りません。どうぞ、どうぞ、お願い致します)

 女の手跡とは一目でそれと分る、右のような文面だった。

「これは、間違いなく、お香代さんの手跡だね?」

「はい、さようでございます」

「分ったよ。お前が、この手紙の一件を、おれに隠そうとしたわけが。娘可愛さに、お前は目をつぶって千両箱を渡してやるつもりだったんだな」

「へえ」

「それにしては、なんだな。たった千両たあ、滅法安い身代金じゃあねえか」

「ご、ご笑談を。千、千両が大金じゃねえなんておっしゃるんですかい」

「安い、安い。一粒種の娘の身代金に、こんな危い綱渡りをして、千両た安過ぎる。くれてやんねえ、くれてやんねえ」

「えっ! じゃ親分も、あっしの思案が一番いいと仰言るんですかい」

「それより他に手は無かろうじゃねえか。しかし、なんだぜ。おれは、芋洗坂の空地をこっそりと見張に行くぜ。なあに、心配するなってことよ。おれは、なにも、この取引の邪魔をしようというんじゃねえ。直助が、つつがなくお香代さんの身柄を受け取るのを待って、悪党共の後を届けようというんだ。おらあ、どうしても、奴等の隠家を突き止めにゃならねえ」

脅迫状が二通り

 時刻に近く、相模屋の番頭直助は、千両箱を風呂敷に包んで、麻布芋洗坂を指して出かけて行った。

 空地の奥に、一本の大松が青空をさえぎっている。直助は、千両箱の風呂敷を草の上に置いて、その大松の根っ子に腰を下した。

 姿は見えないが、直助が背中を向けている、大久保加賀守屋敷の塀際の萓の中には、七之助と音吉が、息を殺してひそんでいた。

 どこからか、七ツの鐘が聞えて来たが、それらしい者の姿はどこにも見えない。時刻はやがて七ツ半を過ぎたであろう。だが、空地にはまだ、なんのかわりもない。直助の後姿も、石になったみたいに動かない。

 とうとう、暮六ツの鐘が聞えて来た。それを合図のように、直助の後姿が、やおら動いて、「親分!」と、振返った。

「とうとう、来ねえじゃあねえか」

 萓の茂みの中から、七之助も立上った。

「感づかれちゃったとみえますね」

「そうらしい」

「どうも、そう、平気な顔してられちゃあかないませんよ。こちらはお香代さまの生命にかかわる問題ですぜ」

 萓の茂みの中から出て来る七之助の顔を、直助は恨めしそうに見上げるのだ。

「そう言われると、面目次第もねえ話だが——」

 七之助は頭を掻いた。

「猫の使じゃあるまいし、間の抜けた顔をして、千両箱を持ち帰るのは手前もつらいんです。親分も、手前と一緒に、も一度相模屋まで行って下さらんか」

「いや。それだけは勘弁してくれ。おれも、相模屋の主人に合せる顔はねえ」

「ちぇ!」

 直助は、大袈裟に舌打をして見せた。

 音吉は、握りかためた両の拳をぶるぶるとふるわせている。歯ぎしりをして口惜しがっている様子が分るのだ。

「行こう、音吉」

 そう呼び掛けると、七之助は、先に立って、すたすたと空地を出て行った。

「逃げるんですかい」と、低声で追いすがる音吉。

「黙ってついて来ねえ」

 町家の通りに出ると、なんと思ったのか、ついと、とある露地の中にとび込んで、裏道づたいに龍奥寺の境内にしのび込んだ。

「どうしたんですかい?」

「音。お前ももう、今度のやつが生易しい事件じゃねえってことを、気がついてそうなもんじゃねえか」

「そうでげしょうか?」

「考えても見ねえ。お前が昨夜手に入れた脅迫状にはなんと書いてあったか。一人の奴が、ちがった文句の封じ文を、二通も投げ込むわけがねえじゃあねえか」

「なるほど」

 場所柄も忘れたように、音吉の声が思わずも高かった。

 こうなのだ。

 七之助ほどの捕物の名人が、一昨日から昨日の朝とかけて起った乞食相模屋の一件を、今朝ほど八丁堀から迎えの使者を受けるまで、ぼんやりと眺めている筈はないのである。じつのところ、昨夜は、今朝の明け方まで、七之助は音吉と手分をして、乞食相模屋の表と裏を見張っていた。

 果然、魚は、裏方の音吉の網に入りかけて惜しくも取り逃してしまった。

 草木も眠るという丑三頃だった。いつ、どこから現われたのか、一人の黒装束の人間が、そっと、相模屋の裏木戸に忍び寄ったのである。すぐ近くの塀の蔭に、音吉が忍んでいるとも知らず、黒装束の手に、ちらっと白い物が動いた。

「御用!」

 音吉はおどりかかった。

「あっ!」

 小さな叫びを洩らして、曲者は身をひるがえした。その瞬間、音吉の手は、曲物の腕にかかったのである。

「あっ!」

 今度の叫びは音吉であった。女なのだ。女の肌の触感と女の匂い。と——感じた次の瞬間、曲者は、手に持っていた封じ文だけを音吉の手に残して、とられた腕を振りもぎっていた。

 それまでだった。恐ろしく素早い奴で、どの方角に逃げ去ったのか、丑三の闇に、掻き消すように消えてしまった。

 音吉としては、手のうちに残った封書だけが、七之助に対するせめてもの申訳だった。そして、その封書には、

(泣くがよい。なげくがよい。探すがよい。もう三日も経ったら、お前の愛娘は、どこか田舎の宿場女郎にでも、身を沈めていることであろう)

 ただそれだけの、簡単な文句が認めてあった。

「なんて、あっしゃ間抜けでしょう。こんな分り切ったことに、今の今まで気がつかなかったなんて。で、親分、これからどうしようてんですかい?」

「まあ、とにかく、ちっと直助の素振でも見張って見よう」

 墓石の間を抜けて、破垣の根方にうずくまると、そこからはまともに、空地の奥の松の根っ子をぶらりぶらりと歩きまわっている直助の姿が見えた。

お冬とお香代

 宵闇の中を一挺の駕籠をとばして、相模屋の直助が行きついたのは、意外や品川宿の廓だった。ここの土地では一流の貸座敷、角倉屋の前に駕籠を止めたのである。

「なあんだ。野郎、千両箱の猫婆をきめ込むつもりと見えやすね」

 音吉だ。七之助と音吉、芋洗坂の空地から、直助の後をつけて、こんなところまで来てしまったのだ。

「まだどうだか分らねえ。とにかく、おれたちも元気つけに一杯やろう」

 角倉屋の筋向いに、小粋な行燈をかけて、腰掛酒を飲ませている店がある。そこの暖簾をはねて七之助と音吉は、角倉屋の正面をのぞける場所に席を占めた。

 埒もない笑談口の間に、時刻はどんどん経って行った。一刻、一刻半。そうだ。一刻半は間違いなくすぎたようだ。追々、五ツの鐘が聞けるかも知れない。

 と――一挺の駕籠が、角倉屋の裏口から現われた。付き添っているのは直助だ。駕籠の中には、媚めいた色彩がこぼれて、まだ十七八の、おとなしやかな町娘の横顔が項垂れている。

「相模屋のお香代?」

 瞬間、七之助の頭に貯めいたくらいだから、無論、音吉もそう思ったにちがいない。

 しかし、車町の角まで来ると、「じゃ、駕籠屋さん、頼みます。お冬さんも、心細がらなくってもよろしゅうがすぜ。気心の知れた駕籠屋さんが、送ってくれるんですからね」

 そこで、直助は、ふいにそう言ったのである。そして、品川の本通りを真直にかける駕籠に別れて、自分は一人、その町家の角をついと左へ曲った。

「やっ、別れやしたね」

「うむ。いよいよ分らなくなった。こりゃあ、野郎の方がむずかしそうだ。お前、あっちを駕籠の行先を突き止めてくんねえ」

「合点だ。親分」

 七之助と音吉も、そこで二手に別れなければならなかった。

 深川は仙台堀に架った、亀久橋の袂で、娘はやっと駕籠を止めた。そして娘の姿は、亀久町の横丁に身をひるがえした。もう大方は戸を下して、そこの狭い町家の通は暗かった。あわてて、後を追った音吉の耳に、とある露地の奥から。

「姉さん、姉さん!」

 と、二声、若い女の声が聞えた。

「誰あれ?」

「あたし。お冬」

「えっ、お冬ちゃん」

 がたぴしと戸の開く音がして、一軒の裏長屋から、貧しいあかりが露地に流れた。次の瞬間、格子戸の外に転がり出た一人の女が、外に佇んでいる娘の体を、あわただしく格子の中に抱え込んだ。

「おやっ!」

 音吉は不思議そうに頭を捻った。そうだ。あの女だ。一昨日の朝、相模屋の店先の人群の中で見た、半纏着の三十女だ。

 音吉は、伸上って、指に唾をつけて高窓の障子に穴をあけた。貧しい茶の間の、つぎはぎだらけの行燈のかたわらに、女は、泣き咽ぶお冬の体を、言葉もなく、いじらしそうに抱き締めているのだった。

 一方、七之助の行手に展開された情景もまた、意外の連続だった。直助は、目黒長峯町のとある仕舞屋から、やはり、年の頃十七八の、美しい娘を連れ出して、駕籠をやとって、三田四国町の相模屋へと連れ帰ったのである。

 それが、相模屋の娘お香代にちがいないことは、直助が、その娘に対して、主従の礼をとっていたのでも分るのだ。

 尚、その他に、七之助が気がついたことは、お香代と直助の心と心が、主従の関係を越えて結びついているのではないかということであった。

お紋と直助

 相模屋騒動の詮議には、音吉も大いに男を上げた。その中でも一番大きな手柄は、亀久町の姉妹の身元を洗ったことだ。

 三十女は、お紋といって、芝口に糸屋の店を持っていた百蔵の後家。お冬は、その百蔵の実妹だった。

 百蔵は、人のいい男で、友達の借金の請人に立って、店の権利も品物も押えられてしまった。債権者が、三田四国町の乞食相模屋だったので、情容赦もなかった。気の小さい百蔵は、親の代からの芝口の糸屋だけに、お先祖さまにすまないといって、歎き悲しんだ。

 それを見るに見兼ねて、妹のお冬は、百蔵夫婦に無断で、品川の廓に身を沈め、その身代金を相模屋に届けさせた。

 お冬の犠牲で、糸屋の店は助かったが、しかし、百蔵にとっては、自分が乞食になるよりも、妹の一生を台無しにしたことの方が、はるかに大きな苦痛であった。そして自棄酒の味を覚えて店をつぶした揚句に、品川の海に身を投げて死んでしまった。

 後に取り残された後家のお紋は、亀久町の裏長屋に逼塞して、なんとかして、お冬の体を苦界から救い出す工風はないかと、肝胆をくだいた。自分の体で間に合うものなら、いつでも進んで身代りになってもやりたい。しかし三十に手が届いた古女房では、みずみずしい娘盛りのお冬の体は買い戻せない。おつりにも足りないくらいだ。

 そんな苦しい明暮を送るうち——。

 五月五日の早朝、彼女は、亀久町の町木戸に貼りつけてある、乞食相模屋の白米大安売りの貼紙を見たのであった。

(きっと誰かの悪戯だ。しかし、なんだか面白い見物ができそうだ)

 お紋は半纏をひっかけて三田へ急いだ。果して、相模屋の店の前には、すでに数百人の人群がひしめいていた。

 翌日も、お紋は、相模屋の付近を徘徊して様子をうかがった。番頭の直助が、娘のお香代を白金町の親戚に送る途中で、覆面の賊におそわれてお香代を奪われ、自分も太鼓橋の袂に晒者にされた一条は、すでに界隈の評判になっていた。

 お紋は、ふと思いついた。

(三右衛門はお香代を溺愛していると聞いている。もしもお香代が、田舎の宿場女郎にでも売りとばされていると聞いたら、どんなになげき悲しむであろう)

 お紋の胸は復讐の快感に疼いた。脅かしだけでも溜飲が下ると思った。お紋は、脅しの文句を認めた封じ文を用意して、夜更を待って相模屋の裏木戸をうかがったが、そこで、音吉に妨げられて目的を遂げずにしまった。しかし、ほんとのところは、相模屋の番頭直助の怪行動が説明されなければ、事件の全貌は明らかにならない。

 その詮議はもちろん、七之助の分担だった。

 ――五日の朝の騒動の最中に、直助は人群の中にお紋の姿を認めた。

 すると、直助の胸はすぐに痛んだ。主人三右衛門の強慾から、お紋の夫は品川の海に入り、義妹のお冬は苦界に身を沈めている。

(ああ、気の毒なことだ)

 と思うと、天来の声のように、直助の胸に一策が思い浮んだ。

 普段の冷静な頭で考えたら、それはあまりにも突飛にすぎる、妄想のたぐいであったかも知れない。しかし、あんな場合の人間の思考とは、平時の常識を以っては律しられない。

 直助は直ちに、筆跡をかくした偽の脅迫状を書いて、そっと店の間に落しておいた。その中には、復讐の魔手は、まだまだこんな手緩いことでは済まないぞ、という意味の文句が認めてあった。

 時を計ってお香代に会った。お香代も、お冬の不幸な境遇には同情しているし、お冬の身代金を取り出すために、直助と一緒にやる冒険に賛成した。

 直助に護られて、お香代の駕籠が送り込まれたのは長峯町の、直助の妹の縁付先であった。妹の亭主は、直助から突飛な計画を打明けられると、これも異議なく賛成して、太鼓橋の狂言に手を助た。

 その夜、雨戸の隙間からでも投げ込んだように、お香代の身代金を請求する偽書状を縁側に落すと、それで、すべての手筈はもう調ったわけであった。果して、三右衛門はその偽書状を見ると、要求どおり、誰にも内密に、千両箱を投げ出すはを決めたのである。

 しかし、その手筈は、七之助の登場によってがらりと狂った。

「いまいましい奴だ!」

 直助は口惜しがったが、どこ迄も白ばっくれ通すより他はなかった。千両箱を風呂敷包にして、受取人の現われる筈もない芋洗坂の空地に、彼は、邪魔物の紐をくっつけて、出かけて行ったのである。しかし、直助が、六ツの鐘を合図に、うまうまと、邪魔物の七之助を追っぱらったと思ったのは一期の不覚だった。

「いくらいい働きをしても、表向きにされない手柄じゃ、お前も張合がなかろう」

 縁側に朝風を入れ乍ら、仲よく粽(ちまき)を食っている、七之助と音吉。

「なあに、あっしゃ、あっしの働きを親分にさえ認めてもらやあ、それ以上の望みはねえでげすよ」

「そうか。そう言ってくれるとおれも嬉しい。……貼紙は、相模屋に怨を持つ奴の悪戯に違いねえが、なにしろ、第一、晒者の狂言をかいたてえのが穏当を欠くからな。お上にもお慈悲はあるから、直助の人情深い心に免じて、むごい処刑(しおき)もなさるまいが、まあまあ、頬かむりをきめ込んでおいた方が無難だと考えたのさ」

 お雪が、番茶を淹れかえて座に戻ると、つつましく、七之助のかたわらに引き添った。

「三右衛門は、直助とお香代を夫婦にして、隠居をすると言っているし、お紋とお冬は糸屋の店を返してもらったし、なにも言うこたあねえやな」

「そうでげすとも」

 お雪が、世帯荒れのした指先で、そっと瞼を押えた。

作者について:納言恭平(なごん きょうへい)

納言恭平(1900年 – 1949年)は、本名を奥村五十嵐といい、熊本県出身の小説家です。新潮社で編集者として勤務した後、作家活動に入りました。特に時代小説、捕物帳の分野で健筆をふるい、「七之助捕物帳」シリーズのほかにも多くの作品を残しています。ユーモアとペーソスを交えた作風で、大衆文学の世界で人気を博しました。また、捕物作家クラブ(後の日本作家クラブ)の発起人の一人としても知られています。

© 丸竹書房

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