【朗読】明治開化 安吾捕物 その六「血を見る真珠」坂口安吾【推理小説・時代劇ミステリー】

 

 

 

 

 

明治開化 安吾捕物 その六 血を見る真珠

坂口安吾が贈る、大海原と真珠を巡る謎の事件

輝く真珠の裏に潜む人間の欲望と、天才探偵の推理が交錯する!

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作品と作者について

「血を見る真珠」とは

「明治開化 安吾捕物 その六 血を見る真珠」は、坂口安吾の「明治開化 安吾捕物帳」シリーズの一編です。本作は、東京の木工船会社の新造船「昇龍丸」の試運転を兼ねた豪州への初航海から始まります。木曜島での真珠景気の見聞、そしてスールー海での偶然の真珠貝大産地の発見。しかし、莫大な富をもたらすはずの真珠は、船長畑中の変死と二つの大真珠の消失という事件を引き起こします。船内の人間関係、欲望、そして隠された真実が複雑に絡み合い、名探偵・結城新十郎がその謎を解き明かします。

作者:坂口安吾(さかぐち あんご)

坂口安吾(1906年10月20日 – 1955年2月17日)は、日本の小説家、評論家。本名は坂口炳五(へいご)。新潟県出身。第二次世界大戦後の混乱期に、「堕落論」「白痴」などの作品を発表し、無頼派、新戯作派の代表的作家として活躍しました。既存の道徳や価値観を批判し、人間の本質や社会の不条理を鋭く描いた作品群は、戦後の日本文学に大きな影響を与えました。探偵小説、時代小説にも長け、「安吾捕物帖」シリーズは、その独特な視点と論理で多くの読者を魅了しています。

「血を見る真珠」主な登場人物

結城 新十郎(ゆうき しんじゅうろう)

本作の主人公であり、警視庁の依頼を受けて事件を捜査する名探偵。複雑な事件の真相を鋭い洞察力で解き明かす。

畑中 利平(はたなか りへい)

機帆船昇龍丸の船長。真珠の密漁計画の中心人物となるが、航海中に変死する。

今村 善光(いまむら ぜんこう)

昇龍丸の通訳。船内唯一の文化人で、真珠に強い執着を抱く。

大和(やまと)

昇龍丸の料理方。船底のボス的存在で、インチキ博打の名人。

八十吉(やそきち)

房州小湊出身の潜水名人。キンを妻に持つ。

清松(せいしょう)

房州小湊出身の潜水名人。トクを妻に持つ。生来の博打好き。

キン

八十吉の妻で海女。夫の息綱持ちを務める。

トク

清松の妻で海女。夫の息綱持ちを務める。

五十嵐(いがらし)

昇龍丸の水夫。女色に飢え、金太と共に大和に絡む。

金太(きんた)

昇龍丸の水夫。実直でウスノロと称される。

花廼屋(はなのや)

結城新十郎の助手の一人。田舎通人。

虎之介(とらのすけ)

結城新十郎の助手の一人。勝海舟に可愛がられている。

「血を見る真珠」物語と朗読

あらすじ

明治16年、新造の機帆船「昇龍丸」は豪州への初航海中に真珠貝の密生地帯を発見する。船長畑中利平は房州の潜水名人八十吉と清松を仲間に引き入れ、再び密漁へ出発。しかし、欲望渦巻く船内では、美しい海女キンとトクを巡る船員たちの間に不穏な空気が漂い始める。航海半ば、畑中が何者かに殺害され、同時に二つの巨大な真珠が金庫から消える。3年後、神楽坂の結城新十郎のもとを訪れた八十吉の寡婦キンは、頻繁な家探しに悩まされていることを訴え、新十郎は事件の真相解明に乗り出す。欲望と裏切り、そして真珠にまつわる悲劇。果たして、誰が真珠を盗み、誰が船長を殺したのか。そして、消えた真珠の行方とは――。坂口安吾が描く、海を舞台にした巧妙な人間ドラマが展開される。

Q&Aコーナー

「白蝶貝(Pinctada maxima)」と「黒蝶貝(Pinctada margaritifera)」は、真珠養殖や天然真珠の採取に用いられる代表的な大型の真珠貝です。物語の舞台となる南洋の海域に生息し、特に大きな真珠を産出することで知られています。

  • 白蝶貝:主に銀色やクリーム色の美しい真珠を産出します。特に大型のものは「南洋真珠」として世界的に高く評価されています。
  • 黒蝶貝:その名の通り、黒やグレー、グリーンがかった真珠(「黒真珠」)を産出します。特にタヒチ産が有名で、その独特の光沢と色彩は非常に希少価値が高いとされています。

作中では、両方の貝から巨大な真珠が発見され、その価値が物語の主要な動機となっています。

潜水病(減圧症)は、高圧環境下(水中)で呼吸した窒素などの不活性ガスが体内に溶解し、その後の減圧(浮上)が不適切に行われることで、体内でガスが気泡化して様々な症状を引き起こす病気です。症状は、関節痛や筋肉痛、皮膚のかゆみといった軽度のものから、麻痺、呼吸困難、意識障害、最悪の場合は死に至る重度のものまで多岐にわたります。

作中では、潜水夫の清松が巨大な真珠を探すために無理な潜水を続けた結果、潜水病を発症します。当時の治療法としては、再度水中へ戻してゆっくり減圧する「ふかす」という方法が用いられたことが記されています。これは現代の再圧治療(高圧酸素治療)の原理に通じるものです。

「明治開化 安吾捕物帳」シリーズにおける勝海舟は、主人公・結城新十郎の推理や行動に大きな影響を与える、いわば「知恵袋」のような存在です。彼は直接事件の現場に赴くことはほとんどありませんが、新十郎やその助手の虎之介が持ち帰る情報をもとに、事件の本質や人間の心理について深い洞察を与え、新十郎の推理を導く役割を果たすことが多いです。

作中でも、虎之介が海舟のもとを訪れ、事件の概要を語ることで、海舟が独自の視点から事件を分析し、真犯人やその動機、犯行のからくりについて示唆を与える場面が描かれています。海舟は、幕末から明治維新の激動期を生き抜いた人物として、その経験と老獪な知恵で、複雑な人間関係や社会の裏側を見抜く能力を持っています。彼の存在は、物語に歴史的な奥行きと深みを与え、読者に新たな視点を提供しています。

© 丸竹書房

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