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吉川英治の音本! 新書太閤記朗読連載 第三十八回「高松城の一戦」

 

 

 

🏯 物語の背景

この物語は、吉川英治著「新書太閤記」第三十八回「高松城の一戦」に基づいています。織田信長の命を受け、中国地方の攻略を進める羽柴秀吉と、毛利氏の支配下にある備中高松城との間で繰り広げられた壮絶な戦いを描きます。特に、前代未聞の「水攻め」という戦術が用いられたことで知られています。このあらすじを通じて、その歴史的背景と戦略、そして登場人物たちのドラマに触れていきましょう。

織田信長の命を受け、中国地方攻略を進める羽柴秀吉の軍勢は、備中高松城を目前にしていた。周辺の小城は次々と陥落し、清水宗治が守る高松城は孤立無援の状況に陥る。毛利輝元吉川元春小早川隆景ら毛利本隊は、他戦線での対応や意見集約に時間を要し、高松城への援軍は遅々として進まなかった。

⚔️ 包囲と緒戦の激闘

高松城の孤立は深まり、秀吉軍による本格的な包囲が始まります。緒戦から両軍は激しく衝突し、梅雨空の下、戦いは膠着状態に陥ります。この困難な状況で、軍師たちの知略が試されることになります。

秀吉は、宇喜多秀家らを先鋒に高松城を包囲。緒戦から激しい戦闘が繰り広げられ、宇喜多勢も大きな損害を出す。梅雨空の下、両軍の攻防は一進一退を続ける。秀吉の軍師・黒田官兵衛は、雨中も前線を視察するが、輿から落ちて負傷する一幕もあった。

💡 水攻めの献策

難攻不落の高松城を前に、通常の力攻めでは多大な犠牲が予想されました。ここで、秀吉と官兵衛は周囲の地形を利用した大胆な策を思いつきます。それが、城を水底に沈めるという「水攻め」でした。

秀吉官兵衛は、高松城攻略の策を練る。難攻不落の城を前に、官兵衛は周囲の地形と河川を利用した「水攻め」を献策。奇しくも秀吉も同様の着想を得ており、二人の意見は一致。前代未聞の大規模な作戦の実行が決まる。専門家として、官兵衛家臣の吉田六郎太夫と、備中玉島の郷士・千原九右衛門が召し出され、諸将を集めて軍議が開かれた。

🛠️ 築堤工事の開始と困難

水攻め実現のため、全長約3kmにも及ぶ巨大な堤防の建設が開始されます。しかし、梅雨時期の悪天候に加え、徴用された人夫たちの士気は低く、工事は困難を極めます。

秀吉は本陣を石井山に移し、自ら馬を走らせて築堤の縄張りを指示。全長二十八町(約3km)、高さ四間(約7.2m)にも及ぶ長大な堤を築き、足守川など周囲の河川を引き込んで高松城を湖底に沈めるという壮大な計画が開始される。しかし、徴用された人夫たちの士気は上がらず、工事は遅々として進まない。官兵衛は自ら現場に立ち、厳しく督励するも、人夫たちの巧妙な怠業に苦慮する。

💰 秀吉の人心掌握

工事の遅れは作戦の成否に関わります。秀吉は、単なる威圧ではなく、人夫たちの不満を直接聞き、報酬を与えるという巧みな人心掌握術で彼らのやる気を引き出します。これにより、工事は驚異的な速さで進むことになります。

工事の遅れに業を煮やした秀吉は一計を案じる。人夫たちを集め、不満を直接聞き届ける場を設けた。代表者たちは賃金支払いへの不満や、秀吉軍の敗北を危惧する声を上げる。これに対し、官兵衛らは代表者数名を斬り捨てて威を示す一方、秀吉は残りの人夫たちを咎めず、むしろ酒代として多額の銭を与えるという大胆な策に出る。この秀吉の処置に人夫たちは感服し、一転して奮起。工事は驚異的な速さで進捗する。

� 難工事の克服と湖水の出現

人夫たちの奮起により築堤工事は急速に進みましたが、河川の堰き止め、特に激流の足守川の制御は最大の難関でした。しかし、これもまた奇策によって克服され、ついに高松城の周囲は広大な湖へと姿を変えます。

並行して進められた河川の堰き止め工事も困難を極めた。特に足守川の激流には苦戦するが、吉田六郎太夫の献策により、大船三十艘に巨石を積んで沈めるという奇策でこれを克服。五月七日に始まった工事は、わずか十四日後の五月二十一日にはほぼ完成。高松城の周囲は一夜にして広大な湖と化し、城は湖上に孤立する。

🛡️ 毛利援軍の到着と宗治の覚悟

高松城が湖に浮かぶという異様な光景が出現した直後、毛利の大軍が到着します。しかし、眼前の光景に彼らは為す術を失います。一方、城主・清水宗治は毛利からの降伏勧告に対し、武士としての誇りを示す返書を送ります。

時を同じくして、毛利輝元吉川元春小早川隆景率いる四万の援軍が国境に到着。眼前に広がる泥湖と、湖上に浮かぶ高松城の姿に毛利軍は戦術を失う。そんな中、毛利方から高松城への使者が捕らえられる。使者が持っていたのは、毛利本隊からの降伏勧告に対する清水宗治の返書であった。宗治は、城兵の命を救うよう促す毛利方の温情に感謝しつつも、この一城は毛利家の命運を握る要であり、城と運命を共にし、敵に凱歌を売るつもりはないと、徹底抗戦の覚悟を表明していた。

✉️ 信長への援軍要請

毛利本隊の到着により、戦局は新たな段階に入ります。秀吉は、この好機を確実にものにするため、主君・織田信長に自らの出馬を要請します。高松城の運命、そして日本の歴史が大きく動こうとしていました。

秀吉は、捕らえた使者を丁重に扱い解放。そして、この好機を逃さず中国平定を決定的なものとするため、主君・織田信長に対し、自らの出馬を仰ぐ書状を安土へ送るのであった。高松城の運命、そして毛利と織田の雌雄を決する戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。

👥 主な登場人物

  • 羽柴秀吉(はしば ひでよし) 織田信長の家臣。中国地方攻略軍の総大将。
  • 黒田官兵衛(くろだ かんべえ) 秀吉の軍師。
  • 清水宗治(しみず むねはる) 備中高松城主。毛利方。
  • 宇喜多秀家(うきた ひでいえ) 秀吉軍の先鋒。
  • 吉田六郎太夫(よしだ ろくろうだゆう) 黒田官兵衛の家臣。築堤工事の専門家。
  • 千原九右衛門(ちはら くえもん) 備中玉島の郷士。築堤工事の専門家。
  • 毛利輝元(もうり てるもと) 毛利家の当主。
  • 吉川元春(きっかわ もとはる) 毛利家の重臣。「毛利両川」の一人。
  • 小早川隆景(こばやかわ たかかげ) 毛利家の重臣。「毛利両川」の一人。
  • 織田信長(おだ のぶなが) 秀吉の主君。

📊 戦費について (推定)

「新書太閤記」の原文には、この水攻めに要したとされる莫大な費用についての記述があります。銭六十三万五千四十貫文、米六万三千五百余石という数字は、当時の貨幣価値を考えると天文学的な額であり、この作戦の規模の大きさを物語っています。このグラフは、その費用の内訳を簡略化して示したものです(実際の比率とは異なる場合があります)。

© 新書太閤記「高松城の一戦」インタラクティブあらすじ

吉川英治著「新書太閤記」を元に作成

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