雪之丞変化 連載 第十回「谷中の怪庵」

作品作者紹介

作者: 三上於菟吉

『雪之丞変化』は、三上於菟吉による長編時代小説です。華やかな舞台の裏で繰り広げられる復讐劇と、登場人物たちの複雑な人間模様が魅力の作品です。本作はYouTubeでも連載されています。

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あらすじ

『雪之丞変化』は、女形役者・中村雪之丞が、自らの過去と家族の仇を討つために生きる復讐譚です。表の顔は華やかな舞台に立つ役者でありながら、裏では冷徹な策を巡らし、復讐を遂げていきます。江戸を舞台にした復讐劇でありながら、単なる勧善懲悪ではなく、人間の業や因縁、愛憎が複雑に絡み合う濃密な物語となっています。

物語は江戸で、美しき女形・雪之丞が復讐計画を練るところから始まります。彼の真の姿は、長崎の豪商・松浦屋の息子・雪太郎であり、両親を土部駿河守の陰謀によって不当に破滅させられた過去を持つ。雪之丞は復讐を果たすことを決意し、義侠心に厚い盗賊・闇太郎と出会い、彼を味方につける。雪之丞の巧妙な策略により、浜川、横山、広海屋、長崎屋といった仇敵たちが次々と自滅していく。この復讐は直接的な手段ではなく、巧妙な心理戦と策略によって進められる。その過程で、土部の娘である浪路が彼に深く恋し、彼女自身の悲劇的な運命を辿ることとなる。また、女盗賊のお初も雪之丞の人生に深く関わり、彼への複雑な執着を抱く。最終的に、雪之丞は宿敵である土部三斎と対峙し、その過去の罪を暴き立て、三斎を破滅へと追いやる。復讐を成し遂げた雪之丞の人生は虚無感に包まれ、彼は若くしてこの世を去り、復讐に捧げた人生の儚さを際立たせる。

登場人物紹介

本文

Q&Aのコーナー

お初は、島抜けの法印の酒癖と警戒心の緩みを利用しました。彼を巧みに酔わせ、さらに酒を買いに行かせるように仕向け、その隙に窖から脱出しました。脱出後には皮肉な置き手紙まで残しています。

法印は、元は厳格な修行を積んだ僧侶でしたが、色欲と酒に溺れて悪事を重ね、三宅島に流された後に脱獄した兇悪な人物です。現在は谷中の荒れ寺「鉄心庵」に潜伏し、婦女誘拐を行う女衒たちのために女性を監禁する役割も担っています。

お初は、雪之丞に対する未練と恨みが入り混じった複雑な感情を抱き、彼を徹底的に苦しめることを決意しました。その手段として、三斎隠居の屋敷へ駆け込み、雪之丞の復讐計画を暴露することを考えました。

お初は三斎屋敷へ向かう途中で、雪之丞と敵対する門倉平馬と遭遇しました。平馬が雪之丞に異常な執念を抱いていることを察知したお初は、彼を利用できると考え、彼の道場へ同行し、雪之丞を陥れる手段を模索しました。平馬の口から浪路の失踪に関する情報も引き出しています。